■お断り■◆仮面の裏側・ナナはあくまでも文学作品です。 ◆申し訳ありません。第三回作「仮面の裏側・ナナ」の続きは、
順次UPします。現在執筆中ですので、完成は暫くお待ち下さい。
◆本格AV女優純愛ファンタジー◆
「仮面の裏側」第一話〜七話を連載公開中
◆仮面の裏側・ナナ◆
第一話(天使は、現れた)
良一は恋をした。
花見の季節も終わりを告げ、桜が散り急ぐ頃の事だ。
この春大学を卒業したばかりの良一は、初めての職場で、二十二歳と言う短い人生において何度目かの恋に出会ったのだ。
恋のし始めの頃、良一の胸は絶えずときめいていた。
最寄り駅から会社までの通勤途中、桜の花びらが舞散り、白くまだらに埋め尽くす歩道がある。
その散った桜の花の上を、「今日も会える」と、先を急ぐ毎日だった。
始めの数ヶ月は、良一のまったくの片思いだった。
それは当初、到底叶わぬ恋に思えた。二人の立場が、違ったのだ。
相手の少女は良一より四歳年下の、十八歳に成ったばかりで、まだ初々しかった。
少女は高校を出たばかりのまだ清純そうな雰囲気を、いつも周囲に漂わせていて、それだけで良一を困惑させていた。
しかし、良一のこの胸のときめきは、一体何なのか・・・・。
こんな可憐で美しい娘は、メジャー・アイドルの中でさえ「余り居ない」とも、良一に思わせた。
唯、少女の仕事は、普通とは少し変わっていた。
しかし、少女の仕事振りは、周囲から絶賛されるほど、すこぶる評判が良かった。
職場の誰にも好かれ、いつも明るく、仕事面でも見事に信頼され、また、若いのに頼りにもされていた。
どんな仕事が来ても嫌な顔一つせず、熱心にこなすのだから、「掛け値なし」に、当たり前の結果と言えた。
その姿勢は、職場ではまだ下端の良一にもけして変わらず、素直でやさしく、正直戸惑う程丁寧だった。
数ヶ月たって・・・、本来なら新人が、そろそろ仕事に慣れてくる頃になっても、少女のそうした姿勢や雰囲気は、微塵も変わる事はなかった。
まったく、擦れてこないのだ。此れも、他の同じ仕事をする少女達とは、違った。
「まるで天使だ」と良一は思った。
良一は大学で現代文学を専攻した。
卒業したら、新聞社か出版社に勤めるつもりだった。
しかし、成績はさほど悪くは無かつたが、就職にはかなり苦戦した。
なにせバブルが崩壊して日本全体がおかしくなり、世の中ひどく不景気で、大方の企業はリストラの真最中だった。
街には空きビルや空き店舗が目立ち、職安は、求職者で溢れていた。
多くの卒業見込み者が、皆同じように採用先を求めて苦しんでいた。
求人のあったメディア関係は、えらく狭き門で、とても良一には歯が立なかった。
この数年、何処の企業も新規採用処ではないのだ。
僅かにあった有力な求人は、実を言うと本来なら地方で共に教職にある両親には、真っ先に反対されそうな業種だった。
それで、採用が決まった当初は、唯「映像関係」とだけ電話で話し、帰郷してから詳しく説明した程だった。
話しを聞くなり両親は激怒し、反対し、そして嘆いた。
だが、良一はそれにひるまなかった。
そう、良一を採用したのは有名な「アダルト・ビデオ・メーカー」だったのである。
自分で言うのもなんだが、良一は前向きにものを考える方で、就職先の業種について、世間で見ているほどアンダーなものには思ってはいなかった。
変に性に対してこだわり、隠し、蓋をする事にこそ、「違和感」を感じていた。
それよりむしろ、まじめに社会学的興味を抱いていた。
「性を扱う業種、イコール反社会的」と言う、短絡的考えにも反発感があった。
大学で心理学の履修をした時、人間の性衝動や、それから派生する社会的出来事には、一体何があるのか、良一個人の「主観や感性」だけでは、本当の事は中々理解できなかったからだ。
また、自身の性に対する嗜好もいまだ定まってはいなかった。
まあ、「自分も人並みにスケベだ。」位に考えてはいたが、それは、別に恥じるものでもない。
若い男女が、異性に興味を持つのは、至極自然な事だ。
もっとも、八十歳になってもそれは変わらない、らしいが・・・・。
しかし、両親には世間体が大事だった。
良一の両親が住む町は、中国地方の瀬戸内海に面した人口三千人あるかないかの小さな田舎町で、互いに何処の誰かすぐ解かるような土地だった。
もちろん、良一もその町で産まれ、高校卒業まで育った。
すぐ後ろまで山が迫っているような猫の額ほどの平地の畑と、両側を山に囲われ、入り江の海とに挟まれた漁師町で、気は荒いが底抜けにお人好しな、そして古風な人々の居る町だった。
近頃は漁獲高が減り、漁場が遠くなったと嘆く町人が増えていた。
一番近い大きな町は人口五万人ほどで、やっと市に昇格したばかりで、市と言っても典型的な地方都市だった。
良一はバス通学で、毎日片道四十分ほどかけてそこの進学高校に通い、それなりの成績で高校を出た。
しかし、男の同級生の大半はさらに遠くの水産高校に進学して、寮生活をして海の男をめざすのが、「きまり」みたいになっていた。
在校時代に実習船で遠洋航海するのが、成人式代わりみたいな、海の町だ。
海の実習を終えて帰ってくれば、回りは「一丁前の若い衆」に扱った。
大きい声では言えないが、酒もタバコも大目に見ている。
どうせやるなら、陰に隠れて事件や火事を起こされるよりましだ。
純朴で飾りの無い生活が、そこにはあった。
そんな訳で、良一の実家のある処は、風光明媚だがえらく保守的な土地柄で、それこそ進歩的な考え方など頭から否定され、話にはならない。
両親が学校の先生の息子という事で、良一は小さい頃から勉強が出来て当たり前みたいに育って、息が詰まりそうだったので、本心田舎から逃れたかった。
それが励みで、東京の大学をめざした。
それでようやく卒業に漕ぎ着けたのだが、この求人難である。
さりとて、田舎にはなお更良一向きの仕事は無い。
それに田舎に居たら、町の人々の勝手な決め付けや、勝手な常識が、良一の生活や人生を左右するのが、落ちで有る。
狭い町だから大学を出ても、当然ながら良一の消息は町人達の話題になる。
就職先を知られたら、それこそ「町中の大事件」になるのは察しがついた。
それで、良い仕事が見つかるまでの「つなぎ」という事で説得して、渋る両親を認めさせた。なかば、「親を騙したような」、ものだ。
そんな、こんな、があってようやく良一は仕事に就けたのである。
職場での良一の仕事は、アシスタント・デレクター(通称AD)で、まあ、言わば撮影現場の雑用係であった。
採用面接の時、「デレクターやプロデユサー(製作者)希望」と言ったのが、今の担当になった。
それで体中に小物や材料をぶら下げて、カメラの方向を避けながら、裸の出演者の間を走り回っている。
いずれは、脚本も書いて見たいのだが、それには、現場を知る事から始めねば成らない。
実は良一は今まで、あまりAV・ビデオを見る方ではなかった。
しかし、AVの存在を否定する気はない。
大学の友人などは、良一の仕事を知ると別の意味で素直にうらやましがった。
なにせ、きれいな女優の「裸」や興味ある他人の「セックス行為が見放題で給料がもらえる」となると、並みの若い男なら興味本位に「羨望の的」なのだ。
しかし本当の処は、端で見るほど現場は浮ついたものではない。
物作りは、どんな物でも「真剣勝負」でないと良いものは出来ない。
つまり、いざ撮影が始まってしまうと、それこそ各自がおのおのの持ち場で、ミスのないようにピンと張り詰めた空気のなかで、しかしそれを画面に感じさせないように、作り上げているのだ。
新米ADの良一など、必死で走り回ってやっと持ち場をこなしている。
なにせ、曲がりなりにも少しばかりの幸せと夢を売る仕事なのだ。
世間では表向きマイナーな扱いだが、実は需要も多い。
人それぞれに事情がある。
独身者もいれば、単身赴任者もいる、刺激の欲しい夫婦もいる。
日常のストレスも時には発散しないと、日常生活が、保てない。
本音の部分では誰もAVビデオを見ているから「異常とか、悪人」とは思わない。
だから、良い物(作品)しか売れない。
それで、AVビデオ・メーカーは作品の出来上がりにしのぎを削る。
世間を満足させねばならないのだ。
外から見ると滑稽かも知れないが、ばかばかしい事を至極まじめに、そして、真剣に、神経をすり減らして作らないと、良いものは出来ない。
その気持ちは、スタッフも多くの出演者も、一致して変わらない。
しかし出来上がった作品では、その努力は見えない、唯、唯、猥褻(わいせつ)な映像があるだけだ。
そこに上辺だけ見ている世間と、この仕事をしている業界の人間との理解に「大きな隔たり」がある。
しかしそれを理解させるのは難しい、良一のように「中に入って始めて解る」と言う事は、他の何にでもある。
第二話(出会い)続く
◆仮面の裏側・ナナ◆
第二話(出会い)
その職場で、少女に出会った。
良一がADとして、仕事にとりかかり始めて三度目の現場に、会社専属の新人女優として現れ、始めての撮影に臨んだのである。
少女の芸名を「ナナ」と言った。
実際、誰しもが「何でこんな娘が」と思うほど美しく、清らかに見えた。
脚本に沿って自己紹介の後、思い切り良く脱いだその裸身は、まばゆいほどにバランス良く、美しく、その場の一同は皆一様に息を呑んだ。
全裸の立ち姿の前と後ろをカメラに収めると、監督はナナを床に座らせ、いきなり「ナナちゃん足を開いて。」と、指示を飛ばす。
ナナは立てた両足のひざに片方ずつ手を置くと、ゆっくりと足を開いて行く。
ナナの股間に薄黒い丘が現れ、その下にはピンク色の花芯ボタンと小振りの花弁が恥ずかしそうに見て取れる。
「ナナちゃんお臍の下、もう少し下、そうそこ触って見て、それは何。」
ナナが少しハニカミながら答えて、「ナナの、アソコです。」
「それ、もっと良く見せて、そう、花びらを両手で左右に広げて中を見せて。」
「こうですか。」
ナナは躊躇(ちゅうちよ)なく、自らの花弁に両手を添えて左右に引き、大事な処をカメラに向けて広げて見せた。
添えられた両手の間から、美しい薄ピンク色が、少し水気を帯びて見てとれた。
「そう、そのままでナナのオ**コ見て下さいって、言ってごらん。」
「ナナのオ**コ見て下さい。」
それだけで、現場はいつも以上に熱を帯び、やる気がみなぎった。
好みや趣味、学生時代の部活などのインタビューは、ソファーの上で大股開きのまま、監督に股間に嵌まった玩具を抜き差しされて、身もだえながら答えた。
ナナの股間のピンク色の花弁を押し分けて出入りする白く太い玩具は、濡れて淡い光を帯びて見え、スタッフは息を飲んだ。
やがて堪え切れなくなったのか、大きな喘ぎ声と伴に、ナナの腰は抜き差しされている玩具に呼応するかのように動き出した。
ナナは玩具を股間に迎い入れるように激しく腰を振りながら、「ナナ・イッちゃう。」と叫んで、背骨を反り返し、四肢を痙攣(けいれん)させ、始めてカメラの前で果てたのだった。
ナナは頭が良く、監督の狙いをすぐに理解し、期待以上に猥褻(わいせつ)に動いて、絵になるようにしていた。
当然撮影には熱が入り、デビュー作とは思えない鮮烈な作品となった。
監督も調子が乗って、予定以上にナナにあれ此れさせたので、収録時間は大幅にオオバーしてしまい、デビュー作は二本組にして、漸く収まった。
最近のデビュー作の傾向として、女優があまり知らないうちに、相当きつい内容を経験させてしまえば、後々の仕事を選ばないと言うプロダクション側の思惑もあり、「かまわず、やってくれ。」が主流になっている。
それでデビュー作がベテラン並みにきつい内容の撮影となる。
女優の個性によっては、デビュー作からいきなり、露出、中出し、ぶっかけ、放尿、拘束SM、アナルセックス、サンドイッチ・ファック、何でも有りだ。
それをいきなりの現場で、監督に考えるまもなく要求され、「あれよあれよ」と撮影は進み一本取り終える頃には、一人前のAV女優の出来上がりと言う訳だ。
ひと頃のように「あれもNG(禁止)、これもNG」などと言っていては、今時AV出演の仕事は来ない。
業界の歴史も十五年を超え、二十年目を迎える時期に近付いて、フアンの目も肥えてきた。
生半可な作品では、市場が赦さない。
この不景気で、プロダクションに所属する単体AV女優の数は、毎月リリースされる作品数の十倍近くになる。
AV女優にもそれぞれに事情がある、差し迫って金の欲しい娘もいる。出演希望者も多く、以前のように我が侭など言うと、仕事はまったく回っては来ない。
今は製作会社側の極端な買い手市場で、希望者は次々と現れる。
それで監督は、美しく汚れのない清純そうな女優を、いかにいやらしく汚して行くかに心をくばる。
ナナの最初の監督は、そうしたデビュー作物に定評のある監督だった。
勢い、清純さを正面に出しながら、落差のある猥褻(わいせつ)さが要求される。
ナナはその美しさを鼻にかけるでもなく、デビュー作から、監督に何を指示されても逆らう事もなく、傍から見て痛々しい程に素直で、他の女優とは少しちがう印象を・・・、良一はナナに持った。
くどいようだが、現場にいた誰しもが、皆同じ疑問を持った。
「何で、こんな娘が・・・。」
それで良一も、自身で納得できる(常識的)答えのはじき出しに取り掛かった。
良一の勤めた会社は「スター・コンテンツ」と言い、業界ナンバーワンの規模を誇り、製作から販売まで一環して自社で行なっていた。
系列に写真集の出版社やタレントプロダクションを抱えていて、ここ何年かアダルト・ビデオ業界ではリーダー的存在で、不動の位置にいた。
オフィスなどは上場企業並みに綺麗だ。
最近では社長が、「大学の新卒しか採用しない」と宣言して巷の話題を呼んだ。
勿論資金も豊富で、良一は最初ナナの出演を、「会社が金に糸目を付けず積極的に口説いて強引に獲得し、出演させたのか」と思った。
しかし違った。
後で知ったが、実際は現役の高校時代に、ナナの方から会社を訪ね、熱心に売り込んで来たのだ。
会社もプロダクションも、高校卒業までは女優としては使えない。違法行為なのだ。
説得して、「卒業後に来い」と追い返すのに苦労したと、伝説めいた話が残っていた。
この春めでたく卒業して、ようやくナナの念願は叶ったのだ。
新人の出演作品の決定を決める監督面接は、わざと制作部のオフィスの片隅でする。
本人の意思確認の為に、必ず自分からその場で服を脱ぐようにさせ、大勢の視線の中で全裸にするのだ。
撮影ともなれば、どうせ十人以上のスタッフに囲まれる、現場でゴネられては、仕事にならない。
勿論プロダクション側で、カメラテストなど若干の訓練をさせる場合も有るが、その念押しをする。
「そう、じゃあ監督の指示はどんな事でも絶対に聞いてくれるね、約束だよ。」
「はい、守ります。」
「じゃ早速だけどオフィイスの皆が、ナナの裸が見たいらしいよ、さあ脱いで全裸になって見てもらいなさい。」
「はい。」
ナナは素直に従って、度胸良く次々に着ている物を脱ぎ、チョットかがんで最後のショーツも取り去った。
「そうそう、はぃ綺麗な身体をオフィスの皆さんに見てもらおうね。」
制作部に席が有るから、良一もその場に居た。
ナナの美しい縦長のへその下辺りには、薄黒く遠慮勝な陰毛が、こんもりと膨らみながら下腹部を覆っていた。
身に着けているのは、わずかに白いサンダルシューズだけだった。
女性スタッフは何時もの様に、まるで何事も無いかの様に知らぬ顔で仕事をしている。
しかしこう言う時、男性社員は女優の訓練の為に目をそらさない決まりになっている。
だから良一も、しっかりナナの全身を見た。
しかしこの時はまだ、良一の心に、恋は芽生えて居なかった。
良一自身が業界の新人で、唯の新人女優としてしか、ナナを見る余裕がなかったのだ。
だから、良一がナナに恋をしたのは、ナナのデビュー作に、ADとして参加し、その美しさと可憐さを、目の当たりにした時で有る。
監督がこう言う仕様の面接をするのは、新人の素質を極限で推し量る為の会社の方針で、そのくらいの度胸と、AV出演の強い意志がないと、現場でぐずる使えない女優も出て、撮影にならない事もある。
この業界の洗礼は、業界に帰依する少女達の登竜門で、先の仕事のお呼びも、この面接の出来でほぼ決まるのだ。
ナナはオフィスの男女スタッフの視線をものともせず、見事に脱いだあげく、命令どおり全裸のままオフィス内を歩き、新人としての挨拶回りをして見せた。
面接したデビュー監督は意地悪で、ナナを後ろ手に拘束して、首輪にチエーンをつないでナナを引き歩いた。
「新人のナナです。今日からよろしくご指導ください。」
ナナは後ろ手のまま、行く先々で丁寧に頭を下げていた。
中には回ってきたナナの股間に手をやり、「足を閉じるな。」と命令して、花弁をいじりながら質問する監督や、胸をもみながら「そうかね、まあガンバリなさい。」と挨拶を聞くプロデユーサーなどが居ても、ナナはされるがままに任せていた。
覚悟はアッパレで、身をよじって避ける様なそぶりは、まったく無かった。
美しい上に、度胸がよければAV女優としては花丸合格だった。それで、ナナは超A級候補になった。
その時から、会社の今年一押し新人女優になったのだ。
それにしても、きっと「金目当てに違いない」と、良一は核心を持っていた。
もちろんナナも、仕事場での表向きはそれらしき事を言っていた。
それが一番解りや易く、簡単に相手が納得し易いからだ。
処が、その仕事振りを見て驚いた。
おざなりな仕事が目立つ女優が多い中、とても「金だけが目当て」とは思もえない心のこもった誠意や熱心さ、丁寧さが、いかなる場面でも感じられるのだ。
それでは有名になりたいのか。
甘い所では足がかりにして「有名タレントになりたい」などと言う「浮ついた」目的なのも、AV女優には数多い。
しかしそれも違った。
なんと他の芸能プロダクションからの「タレント・メジヤーデビユーの誘い」を断ってまで、この業界入りをした。
ナナは、街を歩いているだけで人目に付く美少女だったのだ。
正に天職、ナナは業界の申し子だった。
アダルト・ビデオ業界では、その作品は法の許す限りにおいて、猥褻(ワイセツ)であればあるほどユーザーに支持される。
人気女優だからと言って、お嬢様みたいな作品は作らない。
ナナはいつも良一の目の前で、監督やデレクターの求めに応じてその美しい裸身をひらき、股間もあらわに奮闘していた。
いかなる難題にも嬉々としてたじろぐ事なく、全て受け入れて、自らの与えられた過酷な仕事をこなしていった。
男の物が出入りする股間のアップの撮影の中で、時折ターンして捕らえる丹精なナナの顔立ち、カメラ目線を要求される憂いを湛えた瞳の輝き、それは「神からの授かり物」としか、良一には言いようはない。
そして「ここぞ」という時に必ず始まる受身の腰の動きとあえぎ声は、ビデオ的にも願っても無く、圧巻だった。
清純にして猥褻(わいせつ)なナナの出演作は、デビュー当初から好評で、業界でも記録的売り上げとなり、結果、休む間もなく次々と仕事のスケジュールが入った。
余りの立て続けに、逆に担当デレクターが心配したが、ナナは、全て引受けた。
それは、まるで仕事に間が開くのを恐れているかの様だった。
出演作の数が早いペースで増えて来ると、およそ業界で考えられる企画内容の全てを、ナナは経験した。
たまに監督が調子に乗って「やらせすぎた」と心配しても、ナナは「まだ大丈夫です。」と、受けて立つ。
股間に玩具を差し込んだまま、全裸で街並みを歩く露出ビデオや車の中での絡みなどは序の口と言えた。
しかし本音では、スタジオでじっくりと、質濃く責められるのが、ナナ自身には向いているようだった。
SM緊迫物をさせれば、責めた縄師がナナの従順さに「素質がある」と舌を巻き、その理想的な反応に「攻め甲斐がある」と喜んだ。
ナナは受傷癖がありそう・・・、言い換えれば「被虐を好む」と言う事で、目いっぱい恥ずかしく、苛められたいのだ。
縄で縛られ、中吊りにされての股間の玩具攻め、指攻めにも、ナナの股間に咥え込むような受け腰使いは、見事にカメラに収まる。
大の字に逆さ吊にされ、股間を玩具攻めされて、上に向かって放尿した事もある。
片足でも、吊るしたままのSE]を、長く耐えられる女優は少ない。
ナナは片足でも、両足吊るされて不安定に宙に浮いても、男の物をしっかりと受け入れて、腰を使い、自分が果てるまでがんばる。
中には悪趣味な監督もいて、女優の股間に玩具を入れるのをスタッフにさせて、アップでとる場合もある。
良一も駆り出されて、ナナの股間に入れた玩具を抜き差しさせられた。
感じているナナの吐息とあえぎ声に、受身ながら、嵌まった玩具を咥え込むように激しく合わせる腰の動きに、思わず勃起して、その光景がしばらくの間脳裏に焼きついていた。
帰宅してからも、脳裏から離れられないのだ。
休息時に、「さっきは気持ちよかった。」とナナに声をかけられ、良一は赤面した。
実は良一は、頭に血が上り、自分では止められないほど、玩具の抜き差しの早さが早くなったのだ。
大学を出たばかりの良一にとって、自分の手で花弁を押し分けて玩具を出し入れさせるなど正直興奮物で、我を忘れてしまったのだ。
正直良一は、新米社員として「やりすぎた」と思った。女優によっては後で噛み付きものだ。
そんな良一の事も、ナナはまったく悪くは取らない。
仕事で何かしてもらうと、誰にでも素直に感謝するのだ。
だからスタッフ内ですごく評判が良い。
ナナは飲み込みも早かった。
それを生かして、なおさら周りに気を使い、「感良く」仕事をやりやすく立ち廻って、皆を喜ばせ、感心させていた。
何を要求されても、オールOKなのだ。
そして、その撮影の合間の休息時は、いつも気立ての良さを発揮して、良一達にも接してくれ、過酷な仕事をしている事の「不純な感じや、後ろめたさ、汚れのようなもの」は、ナナにはまったく育たなかった。
絡みのシーンが終わると、「さっきまでのあの嫌らしいナナは、どこに行ったのか。」と思うほど、すがすがしいナナが居た。
不思議な事に、本来影であるはずの猥褻(わいせつ)な仕事を、今まさにしている現場の休憩時間でさえ、陰湿な暗い影は見当たらず、明るいやさしさが輝いて感じられた。
絡みで抱かれる相手の、男優達にも気を使い、仕事も丁寧で、いつも心を込めて性行為をする。
だから男優達も気を入れて性行為を行え、やり易いから作品の出来や評判も良く、皆、「ナナちゃん、ナナちゃん」と可愛がったが、それにも分け隔てなく接して、いつも笑顔だった。
ナナの現場は輝いていたのだ。
他の女優だとそうは行かない。
結構「絡みの相手の個人的好き嫌い」で、現場を「しらけ」させる事も多いのだ。
そんな時は現場がギクシャクし、ADなども気を使って大変なのだが、ナナに限っては何も心配はない。
皆、「ナナほど心優しい娘はいない。」と囁き合っていた。
現場慣れしたスタッフであれば、単に商品(撮影の材料)に写ったかも知れないが、良一はまだ新米だった。
それで、良一は恋をした。
他人が聞けば、いや身内でも「おおいにばかげた話」の、恋だった。
ナナは、彼にとって「天使そのもの」だ。
あまりにも近くて遠い、そう、いつも近くで(全裸や性行為まで)見ているのに、手が届かない天使だった。
しかし不思議な事に、ナナの撮影中の激しい性行為を目の当たりにしても、嫉妬するでもなく、覚めた自分がそこにいた。
この思いと、この割り切りは一体何なのか・・・・。
自分でも、謎、だった。
或る日、密かに恋心を抱いていた良一に、思わぬチャンスがめぐって来た。
撮影現場で、ナナが体調を崩したのだ。
ナナの持ち前の周囲への気使いが、風邪を押しての現場入りと成り、かえって酷くこじらせてしまった。
こうなると、ナナの気立ての良さはあだに成る。
それでADの良一に、ナナのマンションまでの付き添い役が回って来た。
本来マネージャーの仕事だが、同じ系列の会社の社員なので、何故か上手(じょうず)に新米の良一に押し付けたようだった。
もっとも有望な新人女優の場合、妻子持ちのベテラン・マネージャーを付けるのが、会社の決め事になっていて、彼らには結構現場の発言権もあったのだ。
この時良一は、チャンスと言うよりは心底ナナの容態を気使って「あわてて」いた。
後で考えると傍目ではおかしいほど、かなり「うろたえて居たような」気がする。
社のロケ用の四輪駆動車で、ナナを彼女のマンションに担ぎ込んだのだ。
所が、ゴホゴホ・フーフーと症状がひどく、そのまま寝かして置いて帰る訳にもいかず、「医者を呼ぶのに立ち会うから」と、携帯で社と連絡を取り、制作部長の許しを得る。
後は医者を呼んだり氷まくらを買いに行ったりで、泥縄式ながら、「そこ、そこ」の看病をする事になった。
ナナは一人住まいで体調を崩して心細かったのか、まるで身内のように良一に頼った。
医者を呼ぶ前にナナの体を拭いたのだが、ナナの裸身を見て一瞬たじろいだ良一を、ナナは「変な人、いつも見ているのに。」と、笑った。
実際、撮影現場では仕事の一環で女優の体を拭くのは日常の事だが、この場合、良一の心には仕事以外の想いが強かったのだ。
悪寒と高熱に苦しむナナの様子に、良一もなす術(すべ)がなく、頭を冷やし続けて汗をかかせ、何度か着替えさせただけだが、実は良一自身心細い思いをしていたのだ。
それでも必死に一晩寝ずの看病をして、昼近い朝方には流石に眠くなり、気を失った。
気が付いたら既に夕刻だった。
その日はまだ、ナナの撮影にとったスケジュールの内だったので助かったが、他の現場が入っていれば、ひどく、「どやされる」処だ。
幸いナナは少し良くなったのか、昼間、知らない内に良一の事を社に電話をして、律儀に了解を取ってくれていた。
良一が目覚めた頃には、ナナの熱も「うそ」のように下がっていたのだ。
良一は、「ほっ」と、した。
第三話(妹みたいなナナ)続く
◆仮面の裏側・ナナ◆
第三話(妹みたいなナナ)
そんな事(風邪でダウンした。)があって以後、ナナは事有るごとに良一に相談を持ち込むようになった。
それこそ、家具選びからペットを「飼う、飼わない」まで、何でも良一に頼った。
看病でナナのマンションに行った時、実はチョット驚いたのだが、ナナの部屋には家財道具らしき物は余り無く、「小さな鏡台とテレビ、あとは少し大きめのベッド」、くらいのもので、それらもたいして金のかかっていそうな物は無かった。
今時の年頃の少女の多くの様に、「夢のような部屋で暮らしたい」などと言うのは、ナナには無縁のようだった。
それでも風邪で寝込んで以来、良一や医者が部屋に来てさすがに考え直したのか、年相応の買い物をし始めたのだ。
それで荷物運びもかねて、買う物の品定めに良一を頼った。
身寄りの少ないナナには、他に頼るべき相手がいなかったのだ。
「良ちゃん、良ちゃん」と、よく頼み事をしてきてくれた。
しかし、唯兄のように慕っているだけで、自分の仕事内容を知っている良一に、まさか恋愛の感情があるとまでは、ナナはまったく気付かなかった。
ナナと部屋に居て困るのは、ナナの大胆な着替えだ。
確かにあれだけ見られていて今更隠すのも「何なのだが」、良一の前で平気で裸を晒す。
風呂から出てきた直後など、全裸でエアコンの前に立ち、平気で良一と話をする。
天真爛漫と言うか、無警戒にとんじゃく無く良一を前に裸身を晒す。その会話がお兄ちゃん感覚なのだ。
それにしてもおかしなものだ、仮に兄としても「兄の見守る前でAVの撮影はないだろう、すると良き理解者と言う事か」などと、良一は一人でナナに占める自分の立場をあれ此れと、考える日々を送っていた。
ナナの心理を推し量って、「まあ、特殊な職場環境に身を置くもの同士の、暗黙の合意による安心感、と言った処か。」などとも考えた。
しかし良一の気持ちは、割り切れなかった。
遠慮なしに部屋に上がるほど親しくなってもなっても、良一の胸のときめきは納まらず、密かに辛い。
良一の仕事現場は、何もナナの撮影に限った事ではない。それこそ多くのアダルト女優や、企画AVの仕事が回ってくる。
企画AVの時など、数十人の女優が全裸で現場をうろつく。
一般的に考えれば壮観なものだが、スタッフは誰も気にしてはいない。各々やるべき事があって、女優の裸など気にしていられないのだ。
「近くで見る事が出来て幸せ」などと言う甘いものではない。
数十人が一斉に絡みを始めると、それを撮るスタッフは、戦場みたいに忙しい状態に、襲われる。
女優達を見ていると、程度の差こそあれ、皆一様に明るい。そして、いきいきと仕事をする。
たまに我が儘な女優も居るが、大半は和気藹々とした雰囲気の現場だった。
その事を先輩ADに話すと、「みんなスケベなのさ」と言った。
表向き「お金」などと言っているが、そんなのは言い訳だ。彼女たちは、願っても日常出来ない事を、この現場でやりにくる。
人は生きて行くだけでも苦悩が伴う。それを忘れるだけの非日常の刺激を欲しい時も有る。
実は、それで発散するから明日も生きて行ける。
躁鬱(そううつ)もストレス障害も、精神治療より「本音の開放」の方が、効果がある。
「ほらあの娘は、嫌らしい事を無理やり命令されるのが好き。」、「あの娘は卑猥(ひわい)にいじめられるのが好き。」、縛られて、吊るされて、やっと満足する女もいる。
軽くても「嫌らしい事をしている処を見せたい、見られたい」・・・・それ、他では出来ないだろう。
女性にもいろんな性癖がある。
しかしそれを解消する場が、今の社会に無い。たとえ男達の長年の陰謀だったとしても、女性に貞淑を求めるのが一般的社会合意で、あえてそれをやれば隠れてするしかなく、下手をすれば危険な目にあう。
或る意味「彼女達の心のリハビリみたいなものだよ。」と言う。
それを合意の上で安全に適えるのが、この業界だ。
その先には、金を払い、ビデオを見て心を癒す男達がいる。
男も女も互いにストレスのはけ口は欲しい。
まあ買い物などの解消手段もなくは無いが、それで済まない重い心理状態の人もいる。
建前だけで頭から「嫌らしい、嫌らしい」では理解がなさすぎる。
それに、良いものを見せたい、造りたいは、作る側の誇りでもある。
この先輩ADは田崎と言い、良一より二年先輩の入社で大卒・新卒採用の一期生に当たり、実を言うと一期生では数少ない生き残りの一人だった。
田崎が入社した頃は、と言っても僅か二年前だが、まだ社の内外ともに、この業界では大学新卒には風当たりが強かった。
現場で、先輩社員に意図的に理不尽に扱変われるのは序の口で、たとえば、学生時代から付き合っていた彼女の両親から、「世間体が悪いから、仕事を変えないと娘はやらない。」と、言われて、心ならずも会社を去って行った同期入社など、枚挙にいとまがない。
それで田崎は、後輩の面倒見が良い。いつも良一を飲みに連れ出しては、励ます。
私大の法学部を出た変り種だったが、見識は高く時々良一を感心させた。
気になったのは、学生時代の事を余り言わない事くらいだ。
身の上については、両親が早くに亡くなっていて、千葉の実家の、歳の離れた兄からの仕送りとアルバイトで、大学を卒業出来た話などは、よく聞かされた。
田崎の家は、房総半島のまん中辺りの畑ばかりの土地持ちだが、数代前の先祖が、明治維新に伴う移封で、徳川家一統が静岡に移住して来た為に、静岡藩から千葉に移り住んで来た。
移住開墾組の成功者で、誇り高かったが、田崎はそこの三男で、卒業までの生活と学費を条件に、財産を放棄したそうだ。
良一は今の仕事の大半を、この田崎から教わった。
何時の間にか田崎は、ナナが良一を兄のように慕っている事も知っていて、たまには三人で飲みに行ったりもした。
ナナも含めて職場仲間の乗りだった。
まあ、職場の上司や同僚が酒の肴だと、想像してもらえば良い。
そんな或る日、ナナは急に引越しの相談を良一に持ち込んできた。
「とにかく、今のマンションをどうしても出たい。」と言う。かなり切迫した様子で、いつものナナに無いあわてぶりが感じられた。
それで、訳を聴いた。ナナは少し躊躇したが、やがて全てを語りだした。
一人で胸のうちに秘めていた重荷を、良一相手にやっと吐き出す気になったのだ。
良一はそこで初めて、日頃の快活さからは計り知れない、ナナの闇の部分をかい間見る事になった。
それはナナと言う人間の、原点に関わる事だった。
ナナの処に、長い事疎遠だった義父が、何処で調べたのか突然フラリと尋ねて来たそうだ。
マンションのドアを開ける気に成れないほど、其れは招かざる客であった。
訳有って、ナナはその義父からどうしても逃れたかったのだ。
ナナの義父は、ナナが五歳の時に母とナナの住むアパートに転がり込んで来たろくでなしの遊び人だ。
何でも、母の勤めていた飲み屋の常連で、一時期は水道工事の仕事で、人も二十人ほど使い、たいそう羽振りが良かった。
だが、役所の工事に役人に金をつかませたのが「バレ」て、仕事が取れなくなり、ギャンブルに金をつぎ込んでにっちもさっちも行かなくなり、会社を畳んだ。
それで、最初の妻には逃げられた。
子供は一人いたが、妻の両親が引き取った。
その後、仕事仲間に拾われてそこに勤めていたが、半分やけ気味で、とても浮かび上がれそうには、なかった。
それがどう云う訳か、ナナの母親とねんごろになり、何時の間にか一緒に暮らし始めて、「お義父さん」と、呼ばされていた。
困った事に、ナナの母はどうやら、「私が居ないと、この人がだめになる」式の愛情で満足するタイプの様だった。
それに義父も、僅かながら家に金も入れているようなので、母も少しは当てにしている処もあったのだ。
そこまでなら、よく或る話で型が付く。
だが、それで済まなかった。
五年も経つと、ナナも小学校の高学年になり胸も膨らみはじめる。アンダー・ヘアーも芽吹いてくる。
ナナの身体は、年を重ねる都度に、確実に大人に近づいていた。
気が付いて見ると近所で評判の、美少女に育って居たのだ。
その頃から義父のナナを見る目つきが変わって、母のいない時には、何かとナナの肌に触れたがった。
義父は、ナナにオモチャやお菓子を与えて機嫌を取った。
ナナを裸にして、膨らみ始めた胸や芽吹いたばかりの股間を撫で回すのだ。
そしてナナは、「母には絶対に言うな」と、脅された。ナナはまだ幼すぎて、それに抗う事はできなかった。
それで、いけない事と感じつつも、誰にもも相談出来ずに数年を過ごした。
その三年後、ナナが中学に入る頃、ナナは義父に襲われた。
最初はレイプ同然だった。抗ったが力ではとても適わない。
押し倒され、制服のスカートを捲くり上げられ、パンティをずり剥がされて、義父の欲棒を激痛とともにねじ込まれた。
足をバタ付かせたくらいでは義父もひるまない。仕舞いには力負けをしてしまった。
ナナは出血もしたが、中に入れられると抵抗する気力も失せ、義父の欲棒が股間を出入りするに任せた。
中学生にもなると、男女のSEXの事は薄々知っていたし、小学生の頃は母と義父が絡んでいたのを見て見ぬ振りをしていた。
だから、痛いよりも「母に済まない」が先に立った。
それで、義父に犯された事を言えないままズルズルと関係が始まってしまった。
男の物を口に含むのも、この時覚えた。叱られながら腰の使い方も、覚えた。
やがて、ナナの気持ちに反して、義父に抱かれて体が感じるようになって行った。
「此れでは、いけない。」と思っていたが、恐くて逆らえなかった。
そんな訳で、義父がナナの初めての男になった。
それから数年、義父は母の目を盗んで、ナナをもてあそんだが、母に申し訳なくて、長い事、母にはその事を言えなかった。
それでなお更、ナナは義父の要求を拒めなかった。
そんな理不尽な状態でも、ナナの身体の方は自然に女の喜びを知って、母の留守に義父が求めると、股間に熱いものを感じて、濡れてくるのが判った。
ナナの股間に義父の熱い男の物が入ってくると、思いとは別に、ナナの腰はそれに応じるように動き出すのだ。
悲しい女の性(さが)で、心や気持ちではない。
ナナはそれで益々傷付き、、謂れなき罪悪感にさいなまれながら「それを胸の奥に隠して」育ったのだ。
ナナが高校に入学する頃、その「ろくでなし」は他に女を作って身勝手にもナナ達親子の前から姿を消した。
ナナはやっと、義父の理不尽な行為からは解放された。
しかし、義父といけない事して、母を裏切っていたと言う罪悪感は、「振り払って」も、何時までも消えなかった。
こう言うと、弱いものが「力ずくで強要された」事で、罪悪感に囚われるのはおかしいと思うかもしれない。
だが、実は悲しい事に、たとえ望まなくても性行為をすれば「身体が、気持ちが良い」と感じてしまうもので、その瞬間、自身も「共犯の罪びと」として、許せない存在に思える人は多い。
義父との事もその行為の数が増すと、心とは別に身体の方が、理屈抜きでそれを望んでしまうのだ。
それで逆らいもせず義父に抱かれて、気持ち良さに身もだえた。
その後必ず、我に返ったナナは淫乱な自分を心の中で責めていた。
その罪悪感から、ナナは自分を罰する為にアダルト女優を天職に選んだのだ。
驚いた事に、ナナはAVデビュー前、その義父以外、男を知らなかった。
性的罪悪感を持つ人間に、「自傷行為」で心のバランスを取ろうとする者が居る事を、良一は大学で学んでいた。
つまり、自分を「絶えず罰せずにはおれない」のだ。
自分を性的に罰し続けて「初めて心の安定を得る」、そうした凄まじい心の葛藤が、ナナにはあった。
その葛藤の逃げ場として、ナナはAV女優を選んだ。
ナナの現在の生き様の訳が、良一にやっと見えて来た。
ナナの引きずる心の病の安定の為には、今の仕事が「最適」な事を知って、良一は愕然とした。
ナナにとって、仕事の名目でどうどうと恥ずかしい姿を晒し、激しく嫌らしく攻め立てられる事は、淫乱な自分を罰する合理的な「自傷行為」であり、苦になる処か、かえって気持ちが楽になる事であったのだ。
他には、安心安全にこの欲求をかなえられる場所はない。
ナナにとってこの職場は、「生きて行く上で、大事な場所なのだ」と、良一は納得するばかりだった。
だからこそ、自分を罰する為に、他の女優の誰よりもきつい仕事でも、受け入れていたのだ。
もしかしたら、他のアダルト女優の中にも、この職業に逃げ込んでいるナナと同病者が、居るのかも知れなかった。
良一は、同じ自傷行為でも「実際に刃物などで体を傷付ける方向にナナが走らなくて良かった」と、心底思って、涙した。
事実、自分で自分の身体を傷だらけにして、やっと生きている病人も、世の中にはいる。
何の憂いも無く育った人間が、その乏しい経験の物差しでそうした人々を測り、常識で批難するのはおこがましいと言う物だ。
とにかく、頼られた良一としては精一杯の事をした。
即座にナナを他のマンションに移らせ、義父から身を隠させた。
その上で、先輩の田崎を通して会社に相談し、話し合いに会社の製作部長(役員)を中に入れて義父を追い払った。
田崎は、訳も聞かずに快く尽力してくれた。
会社としてもナナはドル箱だったので、いくばくかの金を、ナナの義父に掴ませた様だった。
うらぶれて定職もなく、日雇い仕事で暮らす義父は、金を握り締めると、黙ってその場を去って行った。
それで、そうした田崎や会社の好意にナナは感謝し、その仕事振りは他の女優達を圧倒し続けた。
第四話(告白)に続く
◆仮面の裏側・ナナ◆
第四話(告白)
何時しか夏が終わり、秋の気配が漂い始めていた。
少し時が過ぎて落ち着いた頃、良一はショッピングの帰り道、ナナに正式に付き合いを求めた。
時折立ち寄る公園の一角だった。
ここ一週間ほど、良一は言い出すタイミングを狙っていた。撮影の後、ショッピングがてらナナをマンションまで送る機会を作ったのだ。
どんなに精神が病んでいても、どんな仕事をしていようが、良一はナナが好きだ。
ナナの心の病も、その為の仕事も、全て今のままを認めた上での交際の申し込みだ。
もう愛する人が目の前で、いかなる痴態を演じようとも、やさしく見守る覚悟は、良一に出来ていた。
「付き合いたい」と言う突然の良一の意志を聞いて、ナナは一瞬驚き、ためらいの表情を浮かべた。
後で聞くと、思いがけない出来事に、どう対処して良いものか、頭の中身が「すぽっ」と抜けて真っ白になったように、訳が解からなくなった様だ。
そしてナナは沈黙した。
それでも良一は、今の良一のナナに対する気持ちと、良一が考える当面の二人のあり方を話して、納得させようとした。
「納得がいくまで今までどおりに、AVの仕事を続けて良い、それでも自分はナナを愛せる。」と。
しかしナナは、にわかにはこの話を信じはしなかった。
長い沈黙の後、漸く口から出たのは「少し考えさせて」と言う返事だった。
ナナは時間を置けば「良一の気も変わる」くらいに想っていたのかもしれない。
だが、良一の決心は固かった。愛はそんなに軽くは無い。ナナの職業など気にしては居ない。
湧き上がる魂のときめきは、そんな事は関係ないのだ。
それからひと月ほど、二人は仕事以外では、あえて話さないまま過ごした。
勿論、良一が入らないナナの現場もあるが、おおよそナナの現場には縁があった。
いやでも顔を合わせるのだ。それで良一も、「少し気まずいあせり」を、感じては居た。
その間も、何事も無かった様にナナの作品の撮影は続いていた。
ナナは相変わらずの度胸の良い撮らせ振りで、撮影には何の支障もなかった。
良一は大体、モニター画面の傍にいる監督の、直ぐ近くで指示を待つ。
モニターを覗くと、ナナの股間の濡れた花弁を押し分けて出入りする黒光する男の物を、カメラは正確に捕らえている。
映像だけ見ると酷く露骨なだけで、裏に有るものは、何も見えない。
大勢の現場スタッフに囲まれた現場には、ナナのあえぎ声が響き渡り、男優は渾身の腰使いで、ナナを犯し続けるのだ。
それは、いつもと変わらないナナのAV撮影風景だった。
ただ少し変わったのは現場での休息時間、ナナが良一の視線を何となく避けていた事だ。
「嫌われたか?」と思ったが、違った、ナナは恥ずかしかったのだ。
それはナナの心に良一が住み着いた事を意味した。
それでもナナは天真爛漫に、裸の身体を隠すでもなく歩き回ってはいたので、現場のほとんどは、この異変に気付かなかった。
もつともこの商売、いちいち裸を隠してなどいられない。
唯一、田崎だけが気が付いていた。
「お前達、最近どうしたんだ。」
二人の妙な雰囲気に田崎が心配してくれたが、ナナの気持ちが推し量れない内に、田崎に話せるものでもなかった。
撮影明けの「OFF」の日、良一の携帯にナナから電話があった。ナナが「逢いたい。」と言って来たのだ。
このひと月、ナナの心は揺れていた。
本当に良一を愛しながら、今の仕事が「続けられる」のか、或いは良一の為に、今の仕事を何とか「やめる事が、出来ないのか」・・・・。
今の自分を捨てて、「良一の為だけに生きて行けないものか」と、自問していたのだ。
しかし今はまだ、ナナの心の闇は、癒えてはいなかった。
今のナナの赤裸々な仕事を見続けながら、「良一が本当に自分を愛し続けて行けるのか」が心配だった。
ナナは、良一の気持ちを再度確かめた後、彼の提案を受け入れた。
AV女優の仕事を続けながら、純粋に一人の男を愛する女と、女の心の傷を思って、なおかつAV女優の女を愛する男との、少し変わった愛の形だった。
だが、この一風風変わりな愛の形を、誰が責められようか?
この愛は純情で、打算や身勝手な独占欲も見当たらない。
ナナの負い目の部分も包めて、全てを愛する良一がそこに居る。
その夜・・・、二人は結ばれた。
良一を自分の身体に受け入れる事が、「ナナの良一への応えの証」と考え、ナナのマンションに、良一を誘ったのだ。
いざとなると、性行為はナナがリードする。
ナナは良一の男の物を口にして丁寧に愛で、元気付けると仰向けに身体を開き、良一の男の物を花弁の入り口に宛がい奥に導いた。
ナナの中に自分の男の物がヌルリと入った時、良一は幸せを感じて思わず「ウッ。」とうめいた。
良一を受け入れたナナの腰が動き始めると、良一の男の物に肉ひだが絡み付いて快感が襲ってくる。
ナナの腰の動きに呼応して、良一も抜き差しを始めると、ナナはくぐもった善がり声をもらし始める。
ナナも感じて居たのだ。
「先に、お願い先にイカせて。アァ。」
カメラの前とは違い、ナナは控えめの善がり声の中、背骨をのけぞる様に全身を震わせて果てたのだ。
その後、良一を仰向けに体位を変えて騎上位に成ると、良一が果てるまで腰を使い続けた。
それはナナにとって、初めての愛ある性行為だった。
ビデオの仕事とは違い、ナナは恥ずかしそうに良一にすがり付き、身をまかせた。良一の愛を、目一杯感じたのだ。
日常愛し合い、非日常で仕事をする。
そうした日々が、この日から若い二人に始まった。
この年の暮から新年に掛けて、ナナは「初めて心温かい年を越した」と言う。
傍に良一が居たからだ。
脚本の仕事も増え、ナナの仕事も多かったが、互いに顔を合わせば「ホット。」して、二人で過ごす冬は暖かい。
気が付くと、いっしか二人が卒業して二度目の春を迎えていた。
会社の有志で桜の花見の宴もした。
花曇りの空の下、去来するこの一年は、良一にとって「いとおしく」もあり、感動的だった。
年が変わると、良一の後輩も入社してくるし、ナナなどAV女優は、一年も続ければ、業界では立派にベテラン扱いだ。
二人とも仕事に余裕ができ、個人の生活を築く時間の作り方もうまくなった。
「OFF」の日は、二人で食事や映画にもいった。
年頃のカップルらしく、近くの有名な大型レジャーランドにも行って見た。その日常において、他の業界のカップルと何の違いも無かった。
いくらかその生活に慣れると、ナナは普通のカップルでは到底考えられない提案をして来た。
かねてから脚本を書きたがっていた良一に、自分の出演作を書くように、勧めたのだ。
即座に、良一は断った。
良一にすると、仕事とは言え自分の恋人がする為の赤裸々な痴態や性行為を、自分の手で書く事には、ためらいを感じたのだ。
しかしナナは後に引かなかった。ナナは良一の夢を叶えたかったのだ。
「個人と仕事は別でしょ。約束したじゃない。」
言われて見れば、それが二人の原理原則で、良一には一言も無い。
ナナが言うには、「売れっ子の自分が言えば、会社も必ず検討してくれる。
良一には、やりたい仕事をさせたい。」と、思いを強くしていた。
上手く行くと、良一の脚本家デビューも、異例の早さではあるが認められる可能性があったからだ。
ナナは自分の心の内面も含めて一番知っている良一にこそ、ナナの「この仕事を選んだ目的に沿った脚本」が出来るはずだと、良一を説得した。
実はナナは、本心、今の二人の変わった関係を、その事で更に確かめたかったのだ。
ナナは、良一が自分を陵辱させる脚本が書けて始めて、ナナの仕事を認めている証になると考えたのだ。
この理不尽な要求を、良一はしぶしぶ承知した。
とりあえず書いて見せる事で「ナナを納得させれば良い」と思ったのだ。
本音の所、良一は仕事としての脚本書きに、まだ自信を持つに至っては居なかった。
それに、ナナが仕事でする性行為を書く事には抵抗がある。
しかし書き始めると違った。
生来書く事が好きだった上に、書いて居ると、何か言い知れない異様な興奮が、良一を包んでくるのだ。
良一が書く事は、彼の頭の中で愛するナナを性的に攻め立てる事であり、その情景が脳裏に浮かんで来て、思わず筆に力が入ってしまった。
愛している相手を、「性的にどう愛するか。」を考えるのは、男にとって、純粋な衝動である。
此れは遊びと違って思い入れも強く、興奮も多いにする。
それこそ一緒に住み始めて初めての行動だが、途中で書くのを止めて、ナナを突然押し倒し、パンティを引き剥がして思いを遂げたくらいだ。
いつになく積極的な良一に、ナナは戸惑いながらもそれに応じた。
良一の男の物が花弁を押し分けて入り込み、それが深く浅く出入りを始めると、ナナは快感に酔いしれた。
肉ヒダを擦って出入りする良一の男のカリ首が、何時になく固く張っていたのだ。
ナナは時々その書きかけの脚本を見て、あれ此れとアドバイスをしたのだが、自分の性癖願望もあり、それ故いつも以上に激しく猥褻(わいせつ)な脚本に仕上がった。
それからのナナの行動は早かった。
ナナがどんどん会社に持ち込んで製作部長と交渉し、脚本の採用まで決めさせたのだ。
初めナナの手前、義理で目を通した会社の上司も、本の出来が良いので採用を決めた。
その作品は、ナナの「受傷的性癖」を含む個性を引き出し、ナナ自身もより大胆に被写体となり、量産で、少しマンネリ気味だったナナの近頃の作品としては、大当たりとなった。
その作品の成功を、田崎は誰よりも喜んでくれた。
「おい、今度から先生と呼ばなきゃならないのか。」などと、軽口をたたいたものだ。
良一の脚本家デビューの祝いは、三人だけでささやかに居酒屋でした。
ナナが珍しく「おおはしゃぎ」のあげく、酔いつぶれて、田崎と二人でマンションに担ぎ込んだ。
ナナはうれしかったのだ。
良一は以後のナナ作品の半数分を書く事になったが、おかげで二人の関係は、公になってしまった。
この立場の組み合わせは、会社としては本来ご法度の関係である。
第一、ナナに決まった男が居てはフアンの夢が壊れる。噂になれば人気急落の事態も考えられるからだ。
幸い会社は、ナナが仕事を続けていて、良一作品では特に良い味を出しているので、製作部長も、二人を大目に見てくれていた。
それで社員脚本家としての良一が誕生したのだ。
しかし良一は、他の女優作品を手がける事になっても、ナナ作品を書いている時のあの興奮が、他の女優の為の本では得られない事を知った。
その事で、愛するが故の自分の「微妙な心理」を知ったのだった。
その後も、ナナ作品を手がける時のみの良一の言い知れぬ興奮は続き、「密かな楽しみ」となった。
この心理の中では、ナナの相手をする男優も、良一がナナを辱め攻め立てる為の、道具でしかない。
この湧き上がる非日常的興奮の感情が、良一の「仮面の裏側」なのかも・・・と思えた。
その事をナナに告白すると、実はナナにも同じような感情があると言う。
良一の本で撮影に臨む時、「良一にされる、させられる」と言った異様な興奮に襲われて、他の本には無い気持ち良さが、心理的にあると言う。
それで身体が燃え上がり、撮影中、止まらないほど「イキ」続けてしまうそうだ。
本だけでなく、その現場に良一が居ると、尚更感じるそうだ。此れでは、良一の本によるナナの作品が、世間で人気の訳だ。
日常深く愛しみ、それこそナナの為なら「いくらでもやさしくなれる」であろう良一が、思っても見なかった非日常の真理の中では、「ナナを性的に汚し、攻め立てる快感に酔いしれる」、そうした自分の新しい一面に出会ったのだ。
そして、ナナも同じだった。
しかし、それが「自然な人の感情」と言うものかも知れなかった。
第五話(ナナの妹分)に続く
◆仮面の裏側・ナナ◆
第五話(ナナの妹分)
ナナに突然妹分が出来た。
名を小川染葉(そめは)と言った。
勿論、プロダクションが適当に付けた芸名である。
染葉はナナから半年ほど遅れてAVデビューしたのだが、実は二十歳を過ぎての遅いデビューで、ナナより歳は二歳上だった。
処が、染葉はその外見が小学生の高学年くらいにしか見えない。
実際新宿の繁華街辺りを夜歩くと、五百メートルおきに補導されるので、免許証が離せない。
それで、繁華街でチョットした有名人になって、業界にスカウトされたのだ。
「AVに出て見ませんか。」と誘われて、染葉は「面白そうだ」と、その話に気軽に応じて、その日のうちに即乗ったのだ。
後で聞くと日本でも一、二を争う国立大学の三年生だった。
それで、デビューの話もトントン拍子だった。
度胸も良く、「色々経験したいので遠慮なく指示してくれる様に。」と言うので、例のオフィスでの監督面接で、そのまま全裸の上に縄で後ろ手に縛られ、場所柄も無く「感じる、感じる。」と叫びながら、男優にバックから責められた。
そのあげく、監督に「皆に見てもらえ。」と命令されて、股間に男の物を入れたまま、いきなり前向きで両足を抱え上げられ、そのまま制作部のオフィスを挨拶回りさせられた。
彼女は、「入っている所を良く見て下さい。」と言わされ、苦笑いしながら、製作部内を一回りしたのだ。
座って書き物をしていた良一の前にも染葉は連れてこられたが、調度目線の高さにその絶景は来た。
男優の両手で、両方の太ももを広げられるだけ広げられた小柄な染葉の股間には、花びらを押し分けて、男優の極太の男の物が差し込まれて光っていた。
その後染葉は、仕事している女性スタッフの机の上に固定して置いた極太玩具にまたがって、スクワット騎乗位で腰を上下しながら思い切りよく果てたのだ。
女性スタッフは、カメラの為に少し椅子をずらしたが、それっきり固まって、染葉が果てるまで目を点にしたまま逸らす事が出来無かった。
これがそのまま染葉の「デビュー作」となった。
染葉は身体が小柄で顔も幼く見えたが、目が大きくて可愛かった。
前にも言ったが、AV業界では十八歳未満は女優として使えない。
幼女の代わりになる染葉は、貴重なロリータ女優として、その手の作品作りに重宝されたのだ。
お下げ髪で、下半身丸出しの染葉のランドセルを担いだままの騎乗位姿は、リアル過ぎて伝説となった。
その染葉が良一の本で、ナナとレズ物で競演した。
年下のナナが姉役で、染葉が妹で、全てナナがリードして中学生役の染葉にレズのイロハを教えるストーリーだった。
処が、染葉はその撮影で、年下の同姓に子供の様に扱われながら、言葉で目いっぱい辱められ、大股開きのあられもない格好で縛られ、太い玩具でナナに散々股間を責めたてられて「シビレテ」、しまったのだ。
ナナが攻め上手なのは、「自分ならこう責められたい」を、実現するからだ。
それで染葉は、ナナの事を「姉貴、姉貴」と呼ぶ。
ナナは年上に姉貴と呼ばれて嫌がったが、実際外で食事や買い物などすると、その方がどう見ても自然に見える二人だった。
良一が別の仕事の時は、始終一緒に出かけ、年上の染葉がいつもナナを立てていた。
「業界の先輩である。」、が言い分だった。
染葉はけして同性愛者ではないが、どうも年下の同姓に責められるシュチエーションに思い切り感ずる所があったらしく、
その後も良一にその手の脚本をせがんだ。
おかげで良一も、それで数本稼いだ。
それでも足りずに、たまにそれが目的でマンションに顔を出し、プライベートにそれをせがんでナナを困らした。
ナナのもつ性癖からすると、本来自分も責められたい方の口だから、染葉の相手は本意ではない。
もっとも、ナナが根負けして相手をするのを傍らで見ている良一は、それを次の脚本の参考にしたのだが・・・。
一時期染葉はかなりのお邪魔虫だったが、その外見と違い、流石(さすが)国立大の現役と言う処も大いにあった。
知らない間に、出版書店の依頼で仏語の童話を翻訳して、「これ子供向きに訳したけれど、原書はもっとスケベな話。」などと言って良一やナナを驚かしたりした。
小川染葉の実家は、九州福岡の旧家で、元を正せば苗字帯刀を赦された大庄屋の家柄だった。
大正生まれの祖父がまだ現役で、十数か所の貸ビルを所有する資産家だ。
父は、その不動産の管理会社の専務をしていて、堅実に暮らしている。
専務と言っても祖父は年だから、実質父が社長の仕事をしていた。
染葉は、小さい時から大事に育てられ、家庭教師も付きっ切りで、国大入試の基礎など、中学の終わり頃には出来ていた。
さして苦労もせず、日本最高学府の国立大学に合格したのだ。
地元には医師で、今インターンをしている「許婚者(いいなずけ)も居る」と言う。
およそAV女優には縁がなさそうなプロフィールなのだが、本人に言わせると「社会勉強」だと言う。
「許婚者」も知っていて、染葉のAV出演を面白がっているそうだ。
彼いわく、「東京にいる間にいろいろ経験して来い。」とか「地元に帰ったら何も出来なくなる。」、そして「東京で特定な男を作られるより、AVに出て掃け口にする方がまだましだ。」と言っているそうだ。
ずいぶん「裁けた男だ」と思ったら、本人も三年前まで東京で学生生活を送っていて、散々遊んだので、言えた義理ではないのだ。
それが振るっていて、二、三ヶ月に一度飛行機で会いに上京するのだが、染葉のマンションに着くや直ぐに、出演作を見たがって、「早く出せ」と、せかすのだ。
どうせ、の事なら、この状況を「前向きに楽しもう」と、酒でも飲みながら二人で、染葉出演のAVを見てあれこれと話をする。
画面の中で染葉が、嫌らしい事をしていればいるほど、許婚者は喜ぶ。
後はお決まりの合体となる。
それで二人は遠くにいても、結構うまくいっている。
彼の東京土産はそのビデオだそうだ。それを大事そうにもって帰る。
それが前回来た時、ナナとの競演のビデオを見て、その染葉の今までにない感じっぷり、いきっぷりに感動して「これを実際に近くで見たい。」と言い出した。
さすが医者の卵と褒めるべきか、それに応じようとする染葉の根性を褒めるべきか。その気になった染葉が、良一とナナに協力を求めてきたのだ。
もっとも、良一とナナには、それにとやかく言う気もないし、言える訳もない。
「ね、お願い。」と、親しい染葉に懇願されると、嫌でも引き受けざるを得ない。
彼の上京に合わせて、その願いを叶える事にした。
田崎に頼んで、個人的にSM撮影スタジオを一日借りた。
個人で借りるとなると結構な使用料金だが、染葉達二人は、金には困ってはいない。
二人の楽しみに使える金はいくらでもある。
染葉は期待十分で、楽しそうに計画段階から「あれこれ」と注文を付けた。
それで本格的に縛り物で、ナナが攻める事にしたのだ。
スタジオならセット(SM設備)も揃っている。
この日、良一達は初めて染葉の許婚者を見たのだが、想像に反して背が高く、スッキリした二枚目の優男だった。
会う前は、その依頼内容から脂ぎった小太りの感じを想像していたが、「青白きインテリ」と表現するべき風貌だった。
彼は、染葉が受けてくれたので、この一ヶ月の間は酷く楽しみで、福岡にいる間、折に触れてその事を思い出す度「ワクワクした。」と正直だった。
それこそ許婚者は、今日の来るのを指折り数えて、居たらしかった。
お膳立てをして、良一がその場を遠慮しょうとすると「一緒にお願いします。どうせ仕事でいつも染葉のしている事を見ているのでしょう。」と、引き止められた。
それで良一もその場で手伝う事になった。
結局、見よう、見まねで染葉を裸にし、大また開きに縛りあげたのは良一だ。
スタジオのSM椅子は目的に応じる設計になっているから、両手を広げて十字に縛り、両足を片方づつ上に引き上げる様にM字開脚に縛り上げれば、染葉はもう身動きが出来ない。
染葉にはもう秘部を隠す術が無い。濃い目の痴毛の茂みも、花芯ボタンも、小振りに左右に開いた二枚の花弁も、菊の蕾でさえ丸見えになる。
良一はこの時、許婚者に目で「これで良いか?」と確認したが、彼の目はもう爛々と輝いて、染葉の股間を凝視していた。
許婚者の目の前でこれから始まる自分の痴態に期待したのか、染葉の花弁は既に潤いを増し、菊の蕾まで雫が流れ光っている。
「あらあら、しつかり濡れている事。」
ナナが染葉の股間に手を遣り、濡れ具合を確かめると、二本の指を挿し込んで抜き差しを始める。
「あぁ、あぁ〜、あぁ〜。」
染葉は縛り上げられて自由が利かない格好のまま、まずナナに股間を指で攻められた。
ナナの指が花弁に触れたとたんから、染葉の口から「あぁー。」とあえぎ声が漏れ始めて、そのあえぎ声は、この日最後の最後まで止まる事は無かった。
そして、許婚者の名を呼ばされ「染葉の恥ずかしい格好を見て下さい。」と、言わされていた。
その後染葉は、玩具や長物の野菜果物を抜き差しされながら、ローターで股間を散々攻められて、許婚者の前で「イク、イク。」と言いながら何度も果てた。
おそらく染葉にとって、究極の「見られる興奮」で、あっただろう。
その様子を、許婚者は持参のカメラで黙々と撮っていた。
顔にこそ出さなかったが、許婚者の股間は、スラックスの上からでもそれと判るほど、大きく膨らんでいた。
やがて染葉は、これ以上出ないと思われるわめき声とともにのけぞり、悶絶して、極太の玩具を股間に咥えたまま気を失った。
一呼吸しても染葉が、気を失ったままなので、染葉の縄を良一が解こうとすると、彼は、「そのままにして下さい。今度は自分が攻める。」と良一を静止して、カメラを良一に渡し、染葉の股間の玩具を手に取ると、激しく抜き差しを始めた。
流石に長い付き合いの許婚者で、責めるにも遠慮が無い。
続きは良一に撮ってくれと言う事だ。
突然始った第二波の攻撃に、染葉は驚いた様に気が付いたが、相手が彼と知って、名を呼びながら腰を振って、また果てた。
許婚者が、実際のAX撮影でも中々やらないほど、必要に染葉の股間を責めながら「オ**コ気持ちいい。」と、言わせた為、染葉は錯乱した様に、あえぎと言葉を繰り返していた。
相当感じて、許婚者が責め終わっても、しばらく染葉は立ちあがる事が出来無かった。
へたり込んで動けない染葉を、抱き上げてシャワー室に連れて行ったのは、許婚者の彼だった。
シャワーから上がっても、染葉の息が整うには、一時間ほどかかった。
やっと精気が戻った染葉は、「みんなの前で、よくもやってくれたな。」と、染葉は、許婚者の股間をおもいきり指ではじいた。
染葉は、思い切り「イカされ」て、恥ずかしかったのだ。
彼は股間を押さえて飛び上がったが、顔はうれしそうだった。
終わった後、四人で食事をした。
許婚者の医者の卵が、東京での「行き付け」にしているしゃれた和食の店で、一番奥の座敷の一室だった。
染葉は「この人、本当に悪趣味でしょ。」と照れていたが、彼は「人には裏も表もある。一緒になる前に互いに知っているに越したことはない。」と、主張した。
今も許婚者の希望で、染葉は下着を付けてはいない。
それでいて、わざと小学生並みの短いスカートを着せている。
ひざを少し崩せばアンダーヘアーも、「さあ見てくれ」とばかり、諸出しだ。
仕舞いには、「景色が良いから。」と、食事が終わるまでひざを立てさせ、足を開く様に命じたりした。
染葉の股間の花弁は恐る恐る開いて、ピンク色の口元が、向かえに座る許婚者と良一の席からは良く見えた。
ナナが面白がって「それならこうしてやる。」と、悪ふざけで先ほどの極太玩具を取り出し、横からかがみ込んで染葉の股間に差し込むと、許婚者はすかさず「益々景色が良くなってうれしいだろう。」と言って、喜んだ。
ナナは徹して、攻め役に回っていた。
染葉はナナのなすままに、させていた。今日は許婚者の為に自分がオモチャになる日だ。
許婚者は、今日は徹して楽しむつもりで、わざわざ上京してきた。だから目いっぱいわがままを言う。
染葉もそれに答える。
二人が良ければ、それで良い。
飾らず、本音で上手に付き合う「良いカップルだ。」と良一は思った。
まぁ、良一の知る限り、知的なカップルほど性に関してはタブーが無い。
互いに高学歴、高見識を共有する二人は、世間の建前など「うそだと見抜いている」かの、様だった。
うまい海鮮料理と酒、染葉の絶景で、二時間ほど話の花が咲いた。
染葉はその間、玩具を受け入れたままの股間をけして閉じなかった。
彼は言う「僕は目の前にいるのが染葉だから興奮する、別の女ではああした思いは、たいして感じないだろう。」と。
良一は、「それが普通だ」と思う。
「愛するが、ゆえ」の、非日常の興奮は大抵の男にあるらしい。
今日は気持ちが高ぶっているので、これから帰って「染葉のマンションで一戦交えるつもりだ」と、彼はうれしそうに言った。
別れ際「おかげで、今日の事は、一生の思い出になる。」と満足そうに感謝していた。
やさしげな町明かりが、夜のとばりの中を、幸せそうに寄り添い立ち去る二人を、そっと包んでいた。
良一とナナも、寄り添って家路に着く。今夜は何故かすがすがしい。
第六話(女流AV監督)に続く
◆仮面の裏側・ナナ◆
第六話(女流AV監督)
スター・コンテンツには、AX業界では数少ない女流の監督がいる。
「監督」と言ってもまだ若く、当年とって二十六歳になる。
入社して二年ほどはADをして居たのだが、傍目にも度胸が良いのが社長の目に留まり、「女の感性でAVを撮ってみろ。」と言われて監督業を始めた。
彼女は色白で彫が深く、美しかったので、AD時代から撮影スタッフの映像の入る(映り込む)場面の絵が必要な時はよく映像に使われていた。
本人も別に苦にしなかったので、女優の真似事こそしなかったが、仕舞いには、器具による攻め役を引受けていた。
何故か彼女の器具攻めは、或る意味男優の攻めよりきつく、売れっ娘女優相手にも一切の手加減はしなかった。
それで、何人もの女優が彼女の器具攻めで絶頂に追い込まれ、マジに「イカサレた」のだ。
それが社長に認められた。
ナナや良一がこの業界に入った頃には、もう彼女は一線級の監督だったのである。
彼女が日本人離れした色白で彫が深い顔なのには、相応の訳がある。彼女はクオウターで、四分の一ロシア系の血が流れていた。
しかしそのルーツは、あまり清々と人に言えるものではなかった。
話は、彼女の祖母の事に遡る。
彼女の祖母は満州からの引揚者で、終戦の時二十二歳だった。
今の中国東北部の、ソ連国境近くの開拓団に、岡山の草深い山間の村から写真だけの見合いで事前に顔も見ずに嫁に行ったのだが、嫁に行ってすぐに夫を現地召集で兵隊にとられて、夫婦の子をなす間も無く終戦を迎えたのだ。
その終戦の少し前、ソ連が条約を破って満州国境を越え、参戦して来た。
祖母の居た開拓団も、それこそ着の身着のままでソ連軍から逃れようとしたのだが、女、子供、老人がほとんどで、若くて残っていた男は、病人か怪我人ばかりだった。
その病人も怪我人も、逃げる途中でソ連軍に包囲された時、男達は壮絶に抵抗して皆殺にされた。
体力も弱く、武器も酷く劣っていたが、懸命に仲間を守ろうとした結果だった。
それだけでも恐ろしいのに、さらに難題が起こった。
彼らソ連軍は、祖母の難民仲間の群れが、女、子供だけになると、男の本性を剥き出しにし、祖母達を取り囲んで欲望のはけ口を求めたのだ。
ソ連兵にすれば、この小柄な東洋の女達は自分の命と引き換えに得た「戦闘の戦利品」に過ぎない。
だから使い道がなければ、踏み潰して棄てるしかない。
理不尽な要求だが、断れば皆殺しに殺される。
子供達だけでも助けたい。
まだ年端も行かない娘達も、きっとソ連兵の欲望の対象になる。
当時の日本女性は、国を挙げての軍国主義教育で、「ヤマトナデシコの気概」を植え付けられ、誇りを持って育っているから自分を犠牲にする。
祖母は、同行していたまだ幼い娘達や老いた女性達を守る為に、身を捨てて歯止めになる覚悟をした。
代わりに「自分達が代表して相手をする」と身振り手振りで交渉した。
極限においての、ヤマトナデシコの選択である。
話が通じないので、祖母は咄嗟に「もんぺ」の紐を解き、相手の将校に自らの下半身を露出して覚悟を見せた。
「恥ずかしい。」などと言う日常の感覚は既に無かった。まったく仲間の生死をかけた必死のアピールだった。
数人の若妻が、それに習って一斉に「もんぺ」を下ろした。
ソ連兵は、其れを見て「ヤンヤ」と沸きあがった。これだけは万国共通で、国境はない。
祖母は、言い出した責任から志願して我が身を投げ出したのだ。十数人の若妻が、同様にそれに応じた。
ようやくソ連兵と話を付けると、仲間を救う交渉を任され、リーダーの一人になっていた。
おかげで、少女十数人が毒牙から守られ、年よりも含めて、食べる物と狭いながらも寝る所も与えられた。
祖母は、その成果に安堵した。
引き換えが、永遠と続く凄まじいSEX地獄の日々で有る。
部隊長は幹部将校と図って小さな村の村長の家を接収し、にわか作りの慰安所にした。
祖母も、将校に始まり、最終の一兵卒まで毎日何人の相手をさせられた事か。
相手は大勢で夜昼かまわず、股間の休まる時はなかった。
此れは前線の部隊が勝手にしている事で、本国が知る公な事ではない。
SEX地獄の日々でも、時折銃声や砲声も聞こえてくる。まだ、局地的な掃討戦が続いていて、部隊に兵も殺気立っている。
彼らにしても、明日は知れない日々を送っているのだ。
従って、彼らの欲望も半端ではない。愛情もないから、ただ溜まった精液を排出させる為だけに訪れ、祖母達の股間を蹂躙して返って行く。
六帖ほどの狭い部屋に、三人の若妻が「もんぺ」を履く事も許されず、下半身丸出しのまま、欲望のはけ口を求めて訪れるソ連兵を、抗いもせず受け入れ続けたのだ。
そうした部屋が、六部屋ほどあった。
三時間ほどの仮眠時間を与えられたが、誰も「もんぺ」などはく気力もなく、洗面器の水で股間を洗うと、丸出しのままで泥の様に眠った。
それでも、毎朝その時が始まると、最初の二・三人の相手までは、哀しいかな誰でも身体が勝手に感じていた様で、自分も隣の若妻達も、それなりに善がり声を上げて、いつの間にか腰も使っていた。
このおいしい処が、将校の時間だ。その後が、果てしない。
「恥ずかしい」などと言っている状況には無く、唯々体を休ませたいだけだった。
戦争と言う異常な状態がそうした事をさせるのだが、ロシア人も人の子で、一週間も陵辱を続けると流石に人情も通い合う。
それで、彼らにも優しさが垣間見られる様になってきた。
そんな或る日、祖母達は突然解放された。どうやら後続部隊と入れ替わる移動命令が出た様だった。
自分達の移動が決まると、哀れに思ったのか、食料をもたせて開放してくれた。
考えてみると彼らロシア兵も戦場にあって、明日の命も知らない不安から、逃れたかったのだ。
女、子供だけの逃避行は、最後は女の武器で仲間を守るしかない。誰も、其れを責める事は出来ない。
しかし祖母は体調を崩してしまった。
体力が、激しいソ連兵相手の性行為で消耗され、傍目でもそれと判るほど衰えていた。
食料も満足に無い非常時に、開拓団の産婆をしていた女性に指摘されて、妊娠を知った。
祖母は目の前が暗くなるのを覚えた。心当たりはあの名も知らないソ連兵達だけだった。
誰の子かも、全く判らない。とても産めない。
産婆に始末を頼んだのだが、「あんた、死ぬ気か?私には自殺の手伝いは出来ないよ。」と、母体の体力の無さを心配して断られてしまった。
昼間は危険なので、夜、暗がりの中を、音を気使いながら、一同這うように移動した。
乳飲み子は泣くので、母親が泣く泣く満人の家庭に託してくる事もあった。
後になって、何で我が子を棄てるのかと責めるが、あの状況では仲間の群れも、我が子を守るにも、それが一番の選択だったのだ。
荒涼とした大地の、僅かな起伏に身を隠し、コーリャン畑に潜みながらの、逃避行である。
それが、運とは何処にあるか解らないもので、途中で出会った退却中の国境警備部隊の敗残兵の中に、祖母は出兵で離れていた夫の姿を見かけたのだ。
祖母は驚いて身を隠そうとしたが、開拓団の仲間は頼りになる男手を放すはずも無く、夫は、乞われて団のリーダーとして引き上げの仲間に加わった。
そうなると、この事故の様な妊娠の訳も言わねばならない。
「写真見合い。」と言う大して愛を確かめた訳でもない夫だが、産婆からソ連兵との経緯を聞くと、意外な事に、「皆の為に良くやった。」と、手を握って泣いてくれた。
自分達も、負けず劣らずの敗走を生き延びて来たのだ。生きる事が、大事だった。
かなり多くの戦死者と投降して捕虜となった友軍を見捨て、逃げ回って、辿り着いた自分達だ。
誰が、辛い思いをした妻の事を責められようか。
おなかの子は、「二人で育てよう。」とも言ってくれた。
祖母と祖父は何とか引き上げ船に乗れ、日本への帰国を果たした。
多くの日本兵がソ連軍の捕虜となり、帰国が五年、十年と遅れたり、シベリアの大地に帰らぬ人になった仲間も多く、それからすると、まだ良い方だった。
生まれて来たのが、女流監督の母だった。名を望(のぞみ)と言った。
帰国して判ったのだが、祖父は満州国境の戦闘か、その後の敗走かで、二度高熱に倒れた時、子種を造る能力を失っていた。
それで望(のぞみ)が唯一の二人の子になったのだ。
望(のぞみ)は祖父母に大事に育てられたが、混血児を見る世間の目は冷たかった。
望(のぞみ)は第一次ベビイブーマーの団塊の世代より少し早い昭和二十一年の生まれだが、まだ行政が色々混乱していたので、戸籍上は二十二年の夏になっていた。
小さい頃は、近所の年頃の似た子達とは、よく遊んだ。
しかし風貌が違いすぎた。
成長するに連れて美しく育ったが、とても日本人には見えない。
祖母夫婦が満州帰りなのを知る近所の人達は、こう言う悲劇談はめずらしく無い時代なので、影で「露助の子」と呼んでいた。
今だったら人権問題だろうが、父親が違うのは覆いようが無い。
周りの子たちも自分達と違う望(のぞみ)を、次第に遊び仲間から遠ざけて行った。
だから望(のぞみ)は、孤独な少女時代を送った。
望(のぞみ)が中学生になる頃、戦後復興が軌道に乗ると共に、周りの環境が急に変わった。
スポーツや芸能界は勿論、あらゆる処で混血が能力を発揮し始め、世間も、もてはやし始めたのだ。
それで望(のぞみ)にも目が付けられ、勧められて雑誌モデルをかわきりに、芸能界に入って行った。
長身で顔やスタイルも良かったので、さして芸はなかったが、そこ、そこに売れた。
名が売れてくると、周り近所は、手の平を返したように愛想が良くなったが、望(のぞみ)の心は、癒えなかった。
彼らの本音が、嫌と言う程骨身に染みていたのだ。
だから、やさしさに飢えていた。
望(のぞみ)は芸能界では結構もてた。
その美貌と抜群のスタイルは、男達を虜にするのは十分で、言い寄る男が後を絶たない。
それで、何人かの男達と関係が出来た。
二十歳過ぎると、望(のぞみ)の奔放な私生活が大衆紙の話題になったりもした。
その頃に知り合った或る有名な役者一族の御曹司と、望(のぞみ)は恋に落ちた。
子供までもうけたのだが、相手の親の反対でそのまま未婚の母となった。
その時出来たのが、女流監督だったのだ。
表立って親子の名乗りはしてないが、今では父親は大看板のスターになっている。
その後、望(のぞみ)は、まだ幼かった女流監督を祖母に預けて、芸能界を引退し、米国人と結婚したのだ。
望(のぞみ)は、女流監督を米国に連れて行きたがったが、祖母が反対した。
手元で育てると、言い張ったのだ。
今、望(のぞみ)はフロリダ州マイアミに居る。
女流監督は祖母に大事に育てられたのだが、思春期になると、自分の風貌に疑問を抱き、質濃くせがんで困負けした祖母に、満州での「祖母の生きる戦い」を聞いたのだ。
彼女十五歳の時だった。
それで自分のルーツを承知していた。
唯、祖母の話の内容が強烈で、トラウマ気味に、彼女の心に残った。
父方の役者の血筋が騒ぐのか、彼女は仕事好きだった。
女流監督はいま、消費者(ユーザー)参加型の作品に力を入れている。
ファンが女優にさせたい事をリクエストさせて、それを実現させる企画や、希望するファンに女優と共演させて、夢をかなえる企画だ。
ナナもファンに感謝すると言う企画で、希望者千数百名の中から五十名を選んで、次々に「イカせてあげる」と言う作品に出た事がある。
相手が素人だけに、此れは大変だった。
全てナナの方が気を利かしてリードしなければならない。
たまには元気いっぱいの素人もいて、ナナの方が圧倒される事もあるが、大抵は緊張で中々元気に至らず、手を焼く事の方が多い。
女流監督もその辺りは心得ていて、司会進行をかねて助人の男優を用意する。
全裸のナナと「馬鹿でかいマット」が主役だ。
馬鹿でかいマットの回りを参加者が取り囲み、息を殺してナナ達を見守る。
ナナが全裸でマットの上に、軽くひざを立てて足を開いて横たわっている。
先ほどから素人参加者には、ナナの股間のパーツは、可愛く覗いている花芯ボタンも、小振りにプリッと左右に開いた花弁も、その下の菊の蕾も注目の的だ。
そのナナの股間に顔を埋めて、ナナの草むらを両手で左右に避けながら、男優が花弁を両手で開いて、剥きでた花芯に舌を這わせている。
既にナナの口からは、漏れるように小さな喘ぎが聞こえて、腰が浮きかけていた。
そこが充分に水気を帯びると、男優は右手の指を二本差し込み、抜き差ししながらなおも花弁の上の敏感な部分に舌の刺激を加えて、攻め立てる。
ナナの腰は浮き上がり「あぁー、イク、イク。」と声を発して、股間に抜き差しされる二本の指の間から、大量の液体がほとばしり出た。
それでナナは一回目の「イク」に達した。
ダウンしたナナは、休む間もなく男優に足を抱えられ、男優の男の物を差し込まれて、腰を使い始める。
ナナの花弁を押し分けて男優の男の物が抜き差しされ、愛液に濡れて、黒く光って出入りしている。
此れからが、ナナの本格的な性の戦いなのだ。
それは十五分に及ぶ激戦だった。
ナナ得意の受け腰使いが炸裂し、攻防は続くが、男優の堪え切れない発射で、戦いは終わりを告げるのだ。
ナナの股間からは、白いものが湧き出て流れ落ちる。男優の快感の証だ。
いつの撮影でも、ナナは全て中出しで受け入れて、外に出す不自然さを嫌う。
その為にピルの常用を欠かさない。口で受けた場合も、男優の精液は全て飲み込む。
その根底にあるのは、「相手に失礼な事はしたくない。」と言う思いやり溢れた優しさだった。
男優との一戦が終わると、いよいよ素人参加者との交流が始まる。
先ほどの余韻を残してナナが取り囲まれると、先ずは参加者全員で、ナナにローション攻めを行う。
ヌルヌルの手百本が、同時に無遠慮にナナの身体をまさぐる。
両胸は揉みしだかれ、首筋やわき腹、内太ももから尻、至る処に手が伸びて来る。
腋の下から二の腕、足の裏から指の又まで、何処にでも潜り込んで来る。
数が多いので、入り乱れて、ちゃっかり股間の花弁の奥にもアナルの中にも指が潜り込でいる手もある。
ポジションが悪くてはじき出され、ナナの身体に届かない手もある。
約束事だから、何処で有ろうと触られ放題で、いっさいそれを振り払えない。
このローション攻めを長く堪える事が出来る女優はいない。強烈な刺激を全身で感じる事になる。
まともに受けると、早くて五分、がんばっても七・八分とは持たない。
ナナの受けた刺激も強烈で、四肢を痙攣させながら感じていたが、なにせ百本の手がある為、何本かは押さえつけに回って、まったく身動きが出来ないまま、責められ放題に攻められて、失神して果てたのだ。
気を失って体のコントロールを失ったのか、ナナの股間からは噴水がしぶきを上げて噴出していた。
ナナは失禁して、清々と放尿したのだ。
気がついたナナは「此れ、強烈。」と言って、照れ臭そうに苦笑いしていた。
それでも、終わった後の何も無かったようなナナのすがすがしさは変わらない。
何時の場合も、場を和やかにする気使いを、ナナは忘れない。
休む間もなく五十人斬りに入った。
ナナはファンの男の物を次々に股間に迎え入れるのだが、元気付ける口と迎え入れる股間の流れ作業をこなしていかないと、流れが止まって絵にならないので、股間に受け入れたら次の人は口と、どちらも大車輪で、首の振りも受け腰も二人同時の見事な動きで相手を「いかせ」続けた。
しかし、何せ相手が多い。
さすがのナナも三時間を過ぎて残り十人程になった頃には首の振りもきつくなり、ADに横から氷で首を冷やしてもらいながらの奮戦となった。
これが、女性の受ける最高の拷問かもしれない。
腰も立たないのか動きも止まり、唯相手に抜き差しされるに任せて、ようやくゴールを迎えた。
自傷癖があるナナは淫乱な自分を、目いっぱい罰してもらったのだ。
さすがのナナもこの撮影で腰を痛めて、今回だけは数日間は撮影を休養するほど強烈だった。
女流監督のこの企画は、女優仲間では密かに「地獄の特訓」と恐れられ、進んで引受ける娘は少ない。
最近ではナナの他に染葉が果敢に挑戦した。
さすがの染葉も最後近くには完全KOされて、マットの上で伸びてしまった。
それでも妥協を許さず、女流監督はかまわず撮影を続けて、最後の一人の発射まで取り終えたのだ。
ダウンした染葉が、ぐったりしたままそれでもなお数人に犯され続けたのが、AV的には大好評であった。
この企画の原点には、監督の祖母の、一週間に渡るソ連兵による輪姦戦時体験、つまり監督自身のルーツがあり、思い入れもひとしおで、妥協などなかった。
処が、中々受ける女優がいない。
それで頭を悩ましていた時、別の企画の消費者リクエストの方で、ファン感謝「イカセてあげる」に、つまり地獄の特訓に、「女流監督自身を出せ。」と言うリクエストが、多数寄せられた。
その声は日増しに強くなり、仕舞いには「他人にばかりにさせて、自分はなんだ。」と言う非難の手紙やメールまで来始めて、彼女は益々追い詰められて行った。
世間は女流監督を、ナナと同じ目に合わせようと企んでいたのだ。
第七話(女流監督の裸の冒険))に続く
◆仮面の裏側・ナナ◆
第七話(女流監督の裸の冒険)
女流監督はユーザーリクエストの声に精神的に追い詰められて、祖母の極限の逃避行における身を捨てる」決断の心に触れた。
彼女は、容姿には問題は無い。
自分でも被写体として自身はある。後は覚悟だけだった。
一月ほど悩んだが、気持ちが定まらない。
AX監督をしていながら、世間並みの常識にとらわれていたのだ。
それで、製作部長に相談すると、役員室に呼ばれた。
彼女が役員室に行くと、部長はいきなり「下半身につけている衣類を全て取る様に。」と命じた。
彼女が疑問に思いながらも、それに従うと、部長は後ろに回り、黙って男の物を宛がい、彼女の花弁の奥へ入ってきたのだ。
部長が腰を使って抜き差ししている間、彼女は、自分の運命が決まった事を知った。これは「やれ。」と言う事なのだ。
彼女は部長の欲棒からほとばしるものを口で受け止め、後も綺麗に口でぬぐって、部屋を辞した。
何も言わなかったが、彼女の行動が、充分部長への返事になっていた。
女流監督が「自ら地獄の特訓に出るらしい。」と、社内に噂が流れると、染葉が前回の敵討ちを買って出て、勝手に企画の方が先に固まった。
会社の方には異論はない。
それ処か、相当話題作になる事間違いなく、必ず稼げる企画なのだ。
製作部長などは、染葉を影で「監督を追い詰めろ。」と、煽ったらしかった。
包囲網は、完全に出来ていた。
それでついに女流監督は、自分のルーツを自分の身体で体験する決意をしたのだった。
実は彼女は、部長に役員室に呼ばれるまで、人前で裸すらさらした事など無い。
それがいきなり地獄の特訓の撮影である。
これは見物であったが、関係者による「当日即初体験」の究極の期待は消えた。
本人がいきなりのAX出演での失敗を心配して、覚悟を決める為に、自らに特訓を課したのである。
ここまで来て万一逃げ出したら、女流監督としてのプライドが保てない。
企画決定の翌日、出社してきた同僚達は一様に我が目を疑った。
女流監督が、素足にサンダル履きだけの全裸で仕事をしていたからだ。
女の全裸が珍しくないAXメーカーのオフィスではあるが、いつもとは人が違う。
今まで裸など見せた事の無い、どちらかと言うと日頃プライドの高い同僚である。
それが見事な裸身を晒して、股間の薄黒いかげりさえなびかせる様に、オフィスを、動き回っているのだ。
良一なども「ドッキリ」した方だ。
「いい覚悟だ。」と皆思ったが、良く見ると最初の数時間は、かなり緊張していたらしく、仲間と視線が合うのを避けていた。
それに彼女の色白の顔は、ほのかに赤みを帯びているのを、仲間は見逃さなかった。
それでも今更後に引けない。
彼女は役員室や社長室の打ち合わせでも「トレーニングです。」と、それで通したので、覚悟の程は社内に良く伝わった。
スターコンテンツの社員は、運が良いと、エレベーターで裸の彼女と二人きりにもなれた。
彼女の胸や股間に手を触れた豪のものも現れて「せっかくだから触ってやった。」などと吹聴していた。
この時彼女は、最初こそ恥ずかしくて止めて帰りたいのをこらえて、「強がっていただけ」だが、半日もすると、内心「見られるって気持ちいい。」と感じて、次の日も「それで通せる」と考えていた。
覚悟が定まったのではない、新しい感性が芽生えたのだ。
自分としても新しい発見で、「今まで何を見て監督をやってきたのか」と、思い知らされた。
気がつくと自分の中に眠っていた露出癖が、股間を濡らしていたのだ。
所が、である。
次の日会社に行って見ると、誰が付けたのかしっかり固定して、自分のイスから電動玩具がそそり立っているのだ。
机の上には、「着席の際は御使用ください。」のメモまで添えられていた。
一瞬驚いたが、考えてみると、「悪ふざけ」とばかりは言えない。
特訓の目的の第一は撮影前に自分に度胸を付ける事だ。
彼女は黙って着ている物を全て脱ぐと、腰をかがめて玩具を股間に導いて行った。
玩具を股間に差込み腰を下ろす時、彼女の口からは「あっ。」と、声が漏れた。
電動玩具は、「スッポリ」と女流監督の股間に納まっていた。
するとどこからとも無く拍手が起こり、男女を問わず同僚が集まって来たのだ。
誰かが「しっかり見てあげるよ。」と声をかけてきた。
覚悟を決めた彼女は「ありがとう。」と言って、皆の方向に椅子の向きを変え、足を片方ずつ両サイドのひじ宛に置き、股間を広げてのせた。
彼女の股間は、同僚達に丸見えとなった。
この時ばかりは、女性スタッフも、まじまじとそこを見ていた。
色白な肌に栗毛色がかったちじれ毛、丸く肉のひだに包まれた花芯ボタンの可憐な膨らみ、ピンク色をした花びらの真ん中には青透明の玩が、突き刺さる様に嵌まって見えていた。
いつも自分が、顔色も変えずに女優達にさせていた事だ。
自分がしないでは通らない。
彼女は平静を装い、両手で足首をつかむと、「じゃあ、スイッチを入れて。」と元気良く言った。
電動玩具がウイーンとうなり声をあげて、彼女の股間に嵌まったままで、重そうに動き出した。
花びらの上付け根の、微妙なポイント花芯ボタンにも、バイブレーションする物が震えて当たっている。
「あっ、あぁ〜。」
彼女は足首を強く握り、歯を食いしばって快感に耐えていた。
二分としないで、彼女の腰は前後に振られ始め、花びらを掻き分ける様に青透明の玩具が見え隠れを始めた。
自分の腰使いで、玩具を抜き差し、している事になる。彼女は自然に快感を貪っていたのだ。
それでも意地で、腰を使いながら二分ほど耐えて見せた。
やがて、オフィスに彼女の絶叫が響き渡り、同僚は皆彼女の「イク」瞬間を待っていた。
彼女は顔に苦悶の表情を浮かべて身もだえていたが、「ワー。」と言ううなり声を上げて四肢を痙攣(けいれん)させ、のけぞりながら、同僚に見守られて果てたのだ。
彼女が「イッタ」時、再び拍手が起こり、「良くやった。」の声がした。
後はそのままの姿の彼女を置いて、同僚たちは、何も無かったようにそれぞれの仕事に散っていった。
彼女は精根尽きて、しばらくは股間に玩具を入れた大また開きの姿のまま、のけぞる様に身動きできなかった。
最初の経験としては、心身ともに強烈で、そこから覚めるには時間を要したのだ。
製作部長が入ってきて彼女の姿を目撃し、足を止めたが、「おっ、やっているな。」と声をかけて、机の上のマッサージ器を拾い上げ、挨拶代わりに股間に当てたので、彼女は「わっ。」と、わめいて、また果てた。
彼女が果てると、製作部長はこの時とばかり、彼女の大きく開いた花芯のボタンを人差し指でこねながら、「良い作品を頼むよ。」と言って彼女を見つめた。
彼女が、弱弱しく「はい。」と返事をすると、製作部長は漸く手を離し、きびすを返して出て行ったのだ。
この電動玩具を仕掛けたのは、監督供にそそのかされた田崎だった。
彼女はその日一日、席に座るたびに「あっ。」と声を上げて過ごしたのだ。
ファン感謝の撮影参加希望者はものすごく、ナナの記録を上回った。
ネットで密かに募集したのが、スポーツ紙にトピックスで掲載されたのだ。
もっとも、これにも会社側の仕掛け人が裏に居たはずだ。
注目作品なので、良一の脚本にも力が入る。
本来なら参加者皆の見ている前で男優と一戦交えるのが筋書きだが、今回はいきなり百本手のローション攻めから始める。
代わりにローション攻めの前段階で、染葉のバイブ攻めで女流監督の緊張をほぐしてしまう事にした。
全て染葉の希望で、良一が本を書いて企画されていた。
女流監督がキャリヤスーツ姿でスポットライトの光を浴びて中央に立ち尽くすと、光の外の闇の中から多数の手が伸びてきて服を脱がし始め、その間も他の手が彼女の体中をまさぐった。
彼女は一切の抗いを禁じられていたので、されるままに身を任せていた。
当初は「何とか持ちこたえよう」と言う気力が、彼女の発する声を殺していた。
やがて彼女が丸裸になる頃には、その手の指は、無遠慮に身体の一部の中にも入り始めて、彼女もあえぎ声を漏らし始めていた。
丸裸にされた彼女は、脚本どおりに両手を頭の上に置き、足を左右に開いて少し体を前後に揺らして、群がる手の攻撃に耐えていた。
乳首を摘ままれ、乳房はもまれ、尻を捕まれ、アナルも指で犯かされた彼女の股間、花弁の奥には、かわるがわるに二本の指が訪れては差し込まれ、なかで暴れては入れ替わって絶える事がないのだ。
彼女の股間からは止めどなく液体があふれ出て、太ももを伝い落ちていた。
それでも彼女は、何とか崩れ落ちないで踏み留まって、全身を揺らしながら、耐え続けて見せた。
これは圧巻で、すごい絵になった。
その後、大型マットの上で大の字に四肢を固定されて身動きできないまま、大量のローションをかけられて、染葉のバイブの洗礼を受けたのだ。
彼女の股間は閉じたくても閉じられず、染葉の手にするピンク色の極太のバイブは、花びらを押し分けて「ああ・・。」と言う声とともにねじり込む様に差し込まれた。
この時彼女は、自分がこれからメチャクチャにされる予感に、興奮し、期待しているのを感じていた。
「被虐の喜び」と言う非日常の快感なのだ。
染葉は前回の仕返しもあり、必要にバイブを抜き差しして、激しく攻め立てた。
最初はただ女流監督を攻めていた染葉だが、サービス精神は大勢だから、仕舞いには自分も下半身丸出しになり、男優の男の物を受け入れながらの奮戦で、バイブの抜き差しも、力が入る。
その激しさに彼女は堪らず声を上げ、腰を振って小刻みに果てるのだった。
その様子を、参加者五十人が取り巻いて見ているのだが、染葉の合図で一斉に身体をまさぐりだすのだ。
ローションまみれの百本の手に身体中をまさぐられ、股間にも、アナルにも、替わるがわるに指を入れられて「もて遊ばれるのも」、自分がじかに感じて見ると、彼女の想像以上に強烈なもので、それこそまったく休むまもなく「イキ」続けてなおも、いつ終わるとも知れない気の遠くなる経験だった。
これを、自分は経験もなしに他人にさせていた。
その報いを「今受けている」と思うと、一気に上り詰めて、気を失ったのである。
後の撮影は、もっと強烈だった。
彼女は、この時点ではAX女優としては新米で、なんのテクニックも、経験も無い。
だから本来一度に沢山のフアン参加者の相手をするには無理がある。
五十人切りに入ると、フアン参加者をイカせるのは用意ではない。一人イッテも、次々と襲ってくる。彼女は僅か五人をまともに相手しただけで、不覚にも気を失った。
あとは意識もろくに無いままに、残り四十五人に股間を犯され続けて、撮影を終えたのである。
場を仕切っていた染葉には、この事態は望む処で、次々と参加者の男のものを口で元気付け、女流監督の股間に送り込んで、最後の一人まで、余す事なく意を遂げさせたのだ。
その最中、薄れ行く意識の中に、若い頃の祖母達の、生きる事への身を挺した戦いの情景が、しっかりと浮かんでいたのである。
彼女はこの時、やっと自分のルーツを頭だけの認識でなく、体験として身をもって知ったのだった。
ただ自分にとって、今まで女優を叱咤してきた立場とすれば、作品的には敗北である。
それでリベンジを誓った。
この自分主演の作品に、女流監督は続編を出す事で、再び挑戦して、今度は何とか五十人をこなして見せた。
その後彼女は、この体験の味が忘れられず、監督兼任のプレイヤーとして一年ほど活躍し、後ほど紹介するが、新しい作品も手掛けたのだ。
第八話(ナナの母の死)に続く
◆仮面の裏側・ナナ◆
第八話(ナナの母の死)
二人が、ナナのマンションに一緒に住み始めて四カ月程経った頃、ナナの母が急に亡くなった。
ナナの母と、同棲している男からの連絡で、ナナは初めてそれを知った。
死に目には会えなかった。
ナナの母は、義父に捨てられた後、寂さを酒で紛らわす日々を送っていたが、やがて、こりもせず新しい男を作った。
ナナの実父から数えて三人目の男だ。
最初の男、つまりナナの実の父は、ナナが小さい時に亡くなったので、まるで記憶がない。
母は実の父の事は、あまり良くは言わず、ナナにあまり話したがらなかった。
それで実の父の事を、ナナはほとんど知らない。
唯一母から聞いたのは、顔は男前だが、ひどく気の小さい人で、最後は、或る市販薬を大量に服用して車を運転し、勝手に電柱と喧嘩をして亡くなったそうだ。
幼いナナと、借金だけが残った。
食べて行くには水商売が手っ取り早い。ナナがまだ小さい時は、母も若かったから、かなりいかがわしい店で働いて、糧を得ていたようだが、それで、何とか亡夫の借金を返したらしかった。
そこからの母は、三人目の男に辿り着くまで苦労の連続で、余りにも良い事には恵まれずに過ごしていた。
そうした中でも、母は何とかナナを高校に行かせてくれた。
高校在学中、ナナは新体操部に入っていた。
部活の成績はたいして良くはなかったが、ナナはうつくしかったから、試合会場では結構アイドルだった。
それで、芸能プロダクションから目を付けられて居たのだが、ナナの進路選択は、意外なものだった。
それも、此れも義父との事が、ナナの心に暗い影を宿していたからだが、母に知られて傷つけたくはなかったから、ナナは一人で抱え込んで、苦しんでいたのだ。
ナナにすると言いたい事は沢山有る母だったが、大人になると、母の事が少しは理解出来るようになって、母に対する気持ちも、やさしくなれた。
今度の男は母より三歳ほど年下で、四十歳になったばかりで、およそ、モテそうも無い風貌の持ち主であったから、結婚暦も無く、しかし心優しくまじめだった。
稼ぎも一旦全て母に渡して小遣いをもらう堅実ぶりで、ナナを安心させていた。
男の名を啓太といった。
出身は或る東北地方の田舎町で、中学校を出てすぐに集団就職で上京し、東京の下町の自動車修理工場に勤めたのだが、元来が真面目すぎて、中々東京での生活に馴染めず、要領の良い同僚にいつも翻弄されて、勤めが定着しなかった。
その後、自動車関係の仕事と住まいを転々とし、そのままこの歳まで東京に居ついていたのだ。
ナナの母親が勤める飲み屋に、たまたま仕事先の親方に連れられて来て、母を見初め、飲めぬ酒に強くなってまで、通い詰めたそうだ。
母は啓太の優しさにまいって、一緒に暮らし始めたのだが、義父との籍がまだ抜けず、内縁の間柄だった。
ナナは高校卒業を機に、家を出た。
義父との事があり、啓太との同居にためらいがあったからだ。
母と啓太は、ナナの仕事を知っては居たが、あえて話題にするのを避けていた。
啓太は自分で小型トラックを買い、仕事をもらって生計を立てているのだが、その真面目な性格が先方に好かれ、細々ながら食うには困らなかった。
母は深酒を止め、笑顔も戻って来ていた。
ナナは、母もやっと「幸せに巡り会えたもの」と、思っていたのだ。
そんなやさきの母の死だった。
深酒をしていた頃、肝臓をやられていたのが急に悪化し、惜しい事にあっけなく行ってしまった。
二日と入院もしなかった。
それこそ啓太がナナに、入院を知らせる間も無かったのだ。
良一とナナが母の元に駆けつけると、啓太が薄暗い六畳の部屋で、一人で母の遺骸を見守っていた。
それを目の当たりにしたナナは、堪え切れずに泣き崩れた。
号泣だった。
余りにも幸せ薄い母の生涯を思って、ナナは母の死に納得がいかなかったのだ。
ナナは啓太が良い人だとは思っていたが、前の義父との事もあり、警戒しすぎて、一人住まいをしていたのが仇となり、母を看取ってはやれなかったのだ。
互いに東京に身内の薄い三人は、ほとんど三人だけで、お通夜、葬儀、火葬と、ナナの母を送り出した。
年上の妹分染葉は、あいにく北海道露出ナンパ旅行という企画で四、五日出かけていて、留守だった。
北海道の網走から稚内まで、ほぼ一直線の道の人里はなれた荒野を走るトラック車を、全裸姿でヒッチハイクをして、載せてくれたら、お返しに自分の身体に乗せてあげると言う企画だった。
のぼり旗を持っていたので、怪しまれずに其れとすぐ知れて、良い思いをしたドライバーが、沢山になった。
毎回好評のシリーズで、染葉の回は成功率も良く、作品も良く売れた。
染葉は訃報を後で知って不義理をしたと悔しがったが、仕事ではしかたがない。
唯一田崎が、仕事の合間を縫って線香を上げに来た他は、ナナの所属プロダクションから、生花が届いただけだった。
「スター・コンテンツ」には、社員などの身内の葬儀に、生花や花輪を贈る習慣はない。
社名の付いたものは、不本意だが、故人の身内から嫌がられる場合が多いので、少し中身が大目の香典だけを、そっと置いてくるのだ。
それは、田崎が会社から預かってきた。
個人的にも、田崎は身内同然の事をしてくれ、ナナとしても、唯感謝するのみだった。
なれぬ葬儀事も終わり、やっと啓太と母の住む家に母のお骨箱を迎えた。
啓太がそれを抱えて泣きながら酒を飲んでいる時、不思議な事が起こった。
啓太が、「バーン」という感じで骨箱からはじかれ、三十センチほど吹き飛んだのだ。
それを目の当たりにしたナナと良一は、驚いた。
そんな事は通常ありえない、信じられない現象なのだ。
それこそ見たものでなければ、話だけ聞いても誰しも疑う。
啓太自身も、鳩が豆鉄砲を食らったように驚いていた。
どうやら、息も出来ないほど、驚いていたようで、啓太は、暫く動けないで居た。
ひとしきりへたり込んでいた啓太だが、やがて起き上がり、「俺があんまり泣いているのであいつから突き放されてしまった。」と、照れくさそうに言って、また泣いた。
確かに、霊と言うものがいるとするなら、まさに「霊がやったとしか考えられない」、出来事だった。
ナナも母の霊が家に戻って来たのかと、恐ろしさ半分うれしさ半分で、本気で骨箱と話しをしていた。
何ででナナを置いて、「早くに旅立ったのか」と、恨み言を言っていたのだ。
つやの晩から二晩、三人でザコネをしたが、思い切り泣いてふっ切れたのか、三日目の夜には、ナナは良一とマンションに帰った。
二人のマンションに帰っても、ナナは母の思い出話ばかりしていた。
しかし義父との事は、ついに母に告げられないまま、ナナは母をあの世に送り出してしまった。
それでナナは必要以上に、母の霊を恐れた。
その事が良一にとっては、なおさらナナの精神状態を、心配しなければならない結果となった。
それで、良一はある仮説を立てた。
啓太と、ナナの母の骨箱との間で起こった不思議な事を良一なりに分析して、自然科学的にナナを納得させようとした。
良一の説明は、こうだ。
人の持つ脳の容量は、人が思っている以上に大きくて、能力もある、しかし普段本人が使っている脳の部分はほんの僅かで、そこで人格形成なり、知識の蓄積なりをあらかたすましている。
つまり今の学説では、脳の大部分は使われていない事になっている。
しかし、それではとても説明が出来ない事がある。
それは、多重人格障害者の存在だ。
過去の体験なり、現在のつらい現実から逃げ出したい時、別の人格が現れて、本来の人格はその場から都合よく消えて、「現実から精神的に逃げ出している」と言うあれだ。
良一が思うに、きっと別の人格は本人の普段使わない脳の部分に入力されていて、(つまりそこに住んでいて)、それが必要に応じてなんらかのきっかけで、スイッチが入り、現れるのではないのか。
その時本来の人格の方は、影で見ていたり、スイッチが切れていたりするのだ。
人の潜在意識には、本人が普段意識してないような別人格が存在し、まったく違う知識を持ち合わせている事も、充分に有り得る。
その理屈を使うと、骨箱事件はこうだ。
啓太は、ナナの母をこよなく愛していた。
骨箱に変わり果てても「とても離れられない」、一方頭の隅には、「だめだ、この現実を受け入れて、しっかり生きなくてはナナの母に怒られる」と言う思いもある。
そうした二つの思いが一時的に強く脳に働き、精神を分裂させて、「片方が、片方を突き放した」という無意識の自作自演であれば、この現象も自然科学的に説明が付く。
それをナナに解からせた。
「啓太おじちゃん、本当に母を愛していたのね。」と、しみじみ言い、ナナはやっと骨箱事件を納得した。
それで良一は、時間をかけてうまく説明すればナナの「心の治療」も可能ではないのかと、思ったのだ。
良一は今の仕事を続けながらナナの為に文章を書き始めた。
読ませて、立ち直らせるのが目的だった。
日頃仕事を通して、或いは、田崎と話して、社会のAVビデオへの扱いを見て思う事は多々ある。
染葉達のようなカップルもいる。
その職なありながら、良一やナナの様に純粋なカップルもいる。
世の中矛盾に満ちている。
良一の上司である製作部の部長などは、生え抜きのAV製作マンであるが、口癖のように、「作家や絵描き、映画屋なんかは職業じゃない、病気なのだ。」と言って、はばからない。
病気でなければ、「芸術など生まれない」と言うのだ。
良一に言わせれば、人間は皆病気に見える。
そうした中で、心に傷を負ったAV女優ナナは生きて行かねばならないのだ。
ナナの心に響く説明が欲しかった。
それは、良一からナナへの長いラブレターなのかもしれない。
第九話(長いラブレター・その一)に続く
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【参考章】「人が創りし神と仏の間に」
天上の最高神は一体でなければならない。
しかし、日本の大和朝廷が古事記と日本書紀で創出した天之御中主神(あめのみなかぬしのかみ)と同等な神、陀羅尼神(だらにしん)が、渡来した仏教の中に居た。
日本列島の支配者と民はそれを否定することなく同一の神として受け入れた。
その陀羅尼神(だらにしん)、実はエロスの神様だったのです。
◆ 【人が創りし神と仏の間に】最新改訂版・・・・・・・・・・
■
恐れ入ります。■続きは完成後をお待ち下さい。
小説◆「夜鳴く蝉・葉月」「蒼い危険な賭け・京香」「仮面の裏側・ナナ」
【参考章】「人が創りし神と仏の間に」
天上の最高神は一体でなければならない。
しかし、日本の大和朝廷が古事記と日本書紀で創出した天之御中主神(あめのみなかぬしのかみ)と同等な神、陀羅尼神(だらにしん)が、渡来した仏教の中に居た。
日本列島の支配者と民はそれを否定することなく同一の神として受け入れた。
その陀羅尼神(だらにしん)、実はエロスの神様だったのです。
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「夜這い」は、日本の歴史的文化である。
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