或る日突然、ナカヤンの友人、リュウちゃんが居なくなった。
奇妙な事に、部屋の中にはたった今までリュウちゃんが居た痕跡が残っていた。
何もかもそのままに、忽然と姿を消したのだ。
ただ姿が見えないだけでは、警察も事件にならない。
ナカヤンが恋人の京子と二人でリュウちゃんの安否を捜す。手がかりはインターネットサイトに残された「奇妙な文字化け。」だった。
この文字化け、パソコンがプロの京子が懸命に挑戦しても歯が立たない異常なものだった。
失踪したリュウちゃんの部屋には霊気漂う鏡があり、その無気味さはナカヤンだけでなく、恋人の京子も感じていた。
「リュウちゃんを探す。」と言って見たものの、ナカヤンは何とも表現できない無気味さに付き纏われていた。
ナカヤンは言い知れぬ不安を感じながらも、京子の勢いに引きずられる様にリュウちゃん捜索の深みに嵌まって行く。
ネット上を捜索していて、リュウちゃんのHP交信仲間も判明、やがてその交信仲間も捜索に加わって、物語は思わぬ方向に進展して行く。
失踪した男の、豪華マンションに残された婚約者は、気品溢れる美人令嬢・九条民子だった。
どうやら、PC(パソコン)と鏡にその秘密がありそうだ。
罠を仕掛けた一同は、「身の毛もよだつ恐ろしい体験」をする。
「オネガイキヲツケテ」、鏡の中から現れる無気味な白い影は何かを訴えている。
その素人捜索に、途中から永田と名乗る奇妙な警察官が個人の資格と言いながら勝手に参加してくる。
その警察官の正体は・・、何者か。
女性の全裸他殺死体が公園の植え込みに棄てられているのが発見され、それが失踪事件と線が繋がって、やっと警察の本格捜査が開始された。
思いがけない人物が警察官だったり、被害者が犯人だったり、意外な展開に鏡の霊が絡みながら、話が複雑化して、個人の小さな事件のはずが少しずつ思わぬ方向に膨らんで行く。
怪奇な現象と国家単位の陰謀、そして重大犯罪が次々に起こり、ナカヤンの手には負えない。
この閉塞感が漂う文明社会に生きる者達の、互いが織り成す打算と欲望と、安らぎを求める精神の攻めぎ合い。
自ら生み出したIT文明に人は葛藤し、人は便利さと引き換えに時間と余裕を失い、精神が耐え切れない。
人は安らぎを、原始の生存本能(暴力的な)と生殖(性・SEX)本能に救いを求める。
つまり、文明が発達すればするほどバランスを取る為にこの手の欲求は強くなり、上手く逃がさないと暴発する。この心のケアについては世間の建前が理解の邪魔になっている。
被る(こうむる)方が平穏を臨む時、それは始まる。
ルールに自ら縛られた者に、抵抗は許されない。ただ和やかに陵辱されるのみ・・・・・。強いられる秘密パーテー、「今夜は、私でお遊び頂きます。」今始まる・・・・・和(なご)やかな陵辱の宴(うたげ)。
物質的豊かさと平和を維持する為に、日本は何を失ったのか?弱い個人は誰が守るのか?国は見捨てては居ないのか?
ナカヤンの恋人京子が拉致され、山梨、長野、富山、石川、大追跡が始まる。物語は謎が謎を呼び、殺人事件と超常現象に発展しながら、ナカヤンの想像を遥かに超えて、組織的陰謀の背後が見え隠れする。
前途には、現代のモンスターが居る事を、メンバーが誰も知らずに・・・「和やかな陵辱」の意味する物は一体何なのか?
本当の悪魔は何なのか?
混沌として、未だ覚めやらぬIT文明の混迷期に立ち向かう警察庁生活安全局・ハイテク犯罪対策総合センター・ネット犯罪対策課の精鋭がいる。
HP交信、ハプニングバー、アダルトサイト、セレブパーテー、麻薬密売、オカルト教団、アンダー組織、そして生贄の輪姦陵辱、縺れ合いながらその先に見え隠れする赤い北の影・・そして警視庁公安課など。
娯楽小説ですが、自衛の為の交戦権すら持たない日本の現状をこの作品の登場女性達の姿に託してみました。
脳味噌の事を、中国語で脳筋と書いて(ナオチィ)と言う。コンピューターは電脳筋と書いて、(ディェンナォチィ)と言う。
コンピューターは人間の脳が作り出した物で、人間が情報を与えれば、大いに活躍する。
しかし生身の人間の脳には、自分達でコントロール出来ない恐ろしい部分が潜んでいる。
「とてもそんな風には見えない。」と言うけれど、人は理性と性を脳の違う部分で考える。
全ての人間は、その両方を持ち合わせて逃げ場の無いストレスと対峙しながらこのコンピューター社会を生きる定めとなった。
電脳妖姫・九条民子の物語は、コンピューターを使う側の人間に何か警告している。
きっとそうだ。
「オネガイキヲツケテ。」
インターネット上に現れる人間の情念をテーマに、ネット社会の裏に潜む怪しい人々のうごめきやめまぐるしく変遷する情報化社会との間で揺れる性的心理を描きます。
そして、「キットあなたはこの作品に裏切られ続ける。」はずです。
此れは、日本の未来への警告で有り、進み行くインターネット社会への警告でもあるのです。
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