食品偽装は、言うまでも無く犯罪である。

何時も思うのだが、「こう言う事象があります。」ではなく、誰がその原因を創ったのかを問わないと、無責任な政治家や官僚が横行して自分達だけは安全な所でほくそ笑む。

今回、その食品偽装を題材にして逆説的に視点を変え、現代の世相を分析して見たい。

これは恐らく、現代の余りにも左脳域の「利」ばかりに傾倒した企業経営者への警鐘と、それを増長させた米国型自由経済政治や私権主義社会規範への警鐘となるだろう。

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統治の基本は「恐れ（恐怖）」と「敬（うやま）い＝（尊敬）」であるが、多くの統治者が陥り易いのが「恐れ（恐怖）」だけで統治しようとする事である。

「その方が手っ取り早い」と言えばそれまでだが、「窮鼠猫を咬む（困ればねずみも猫に反撃する）」事も出て来る。

これは経営学にも通じる事で、経営者は日頃「敬（うやま）い＝（尊敬）」を獲得する事に注力しなければならないのだが、その経営者が「利」にばかり走って｢偽装」までするようでは獲得すべき「敬（うやま）い＝（尊敬）」と言う基本を自ら棄てる行為である。


本当の事を言えば、「食品偽装」など遥か昔の江戸期から存在した。

確かに好ましくない事ではあるが、以前は偽装しても事故が起こらない限り発覚などしなかった。

食の安全を脅かす食品偽装も勿論大問題だが、この食品偽装が内部告発で次々に発覚する事が、実は雇用制度に於ける「現代の重要な病根の証明」に成っているのではないだろうか？

人は本来「群れる動物（群れ社会の生き物）」である。

つまり群れは「その人間が生きて行く上での寄り所」になる。

人類にとって、「群れ」は「生存本能」とほんど同じ意味を持つ記憶である。

遠い昔から群れで生活した記憶は、永く生存に直結していたから人間の本能に深く染み込んでいても不思議は無い。

人種が違っても、付き合って見れば個人個人の時は結構仲良く出きるのだが、これが部族単位、民族単位と成ると途端に群れの論理に成って憎しみ合う。

その根底に在るのが、本能的に守ろうとする遠い昔の「群れの記憶」なのではないだろうか？

人類は基本的な本能として他の生物同様に「生存本能」を備えている。

この生存本能の発露が「食欲」であり「性欲（種の保存本能）」であり、二次的なものとして危険を避けたり危険に立ち向かう為の「恐怖心」や「闘争心」なども無視出来ない右脳的な生存本能である。

そうした右脳的な生存本能の一つとして、人類はその種としての生い立ちから、「恐怖心」や「闘争心」を共有する事で生存率を上げる為に「共に生きる（共生意識）」と言う強い「帰属本能（群れ意識）」を持ち合わせて生まれて来る。

つまり人類は、「帰属本能（群れ意識）」を満足させないと、精神的安定を得られない。

そしてその「帰属本能（群れ意識）」は価値判断や心（精神）の安定に影響を与え、良きに付け悪きに付け「人生」と言う固体の一生に影響する。



欧米の個人主義を取り入れた明治維新の文明開化まで、日本の津々浦々は「村社会」と言う「村落共生の群れ社会」だった。

その「村落共生の群れ社会」の意識が、戦後の混乱の復興期に本能的に顔を出す。

戦後の日本の目覚しい経済発展の要素の一部として、焼け野が原から立ち上がった戦後直ぐの日本人は遠い昔から群れで生活した記憶をよみがえらせ、大企業はともかく中小零細や個人事業主は立ち上げた企業や事業の中に「擬似の群れ」を構築して労使協調して「うちの会社、うちの会社。」と忠誠を注ぎ込み、チームワーク良く企業も経済も発展させた。

所が、日本経済の発展に連れて「少し儲かり始める」と欲の深い経営者が現れて富を独占し始め、上手く機能していた「擬似の群れ関係」を破壊してまで「労使関係」と言う味気ない立場を中小零細企業や個人事業にまで持ち込んで、労使協調の日本型「擬似の群れ企業」は消滅させてしまった。

少なくとも、バブル崩壊以前の企業はその規模に関わらずある種の忠誠心を持った「擬似の群れ」だった。

つまり、「生き行く為の群れとしての寄り所」であるから、個人と企業が一蓮托生の意識で企業への忠誠心も今よりは遥かにあった。

それを小泉改革（改革と言うには余りにも片手落ちであるが）のワーキングプワ（働く貧困層）の出現は、非・正社員（パートタイマーやアルバイト、契約社員など/非正規雇用）や派遣社員（非正規雇用）を容易にした労働者派遣法（施行＝平19年４月１日）の改悪で、企業が正社員(正規雇用)を減らし労働力をリストラ（リストラクチャリング/この場合は雇用再構築）し、非・正社員（パートタイマーやアルバイト、契約社員など）や派遣社員に置き換えたからである。

小泉・竹中両氏の大企業有利の政策に拠り、非・正社員（パートタイマー/非正規雇用）や派遣社員が一気に増大した為に雇用側有利の賃金体系が確立してワーキングプワ（働く貧困層）が労働者のかなりのウエートを占め、結果正社員（正規雇用）も常にリストラに遭う危険にさらされて給料も長い事上昇せず、物価だけが上がり続ける今日を迎えた。

こうした「非正規雇用制度」は、一方で雇用者側有利に働いて企業（雇用者側）のある種横暴を産み、雇用方法に非情さが反映される。

一方で「非正規雇用制度」は企業に対する従事者の「擬似の群れ」的な忠誠心を無くしてしまった。

こうした雇用環境の変化を、自らその事に関わりながら認識していない経営者はその任に失格である。
,br> つまり経営者が欲に駆られて「偽装」などの違法行為を行う時、以前とは雇用環境がまったく違う事に気が付いて居ないのである。

くどいようだが、群れ社会としての忠誠意識で「和」を価値観として来た日本の組織では、内部告発は「群れに対する裏切りや姑息な告げ口」と言ったイメージが付きまとう。

過去、「社会悪」を内部から告発しても、組織内でいじめられたり左遷や解雇などが待ち構えていたりと、告発者は常に「報復」と背中合わせに置かれていた。

ところが今、この「群れ社会の忠誠意識」が雇用形態の変化で変貌しつつある。

続出している内部告発は、自分達経営者が雇用形態を有利に変えたにも関わらず、この「群れ社会としての忠誠意識」が崩壊した事を経営者が思い至らず、過去の調子で偽装を続けている事を意味しているのだ。

小泉・竹中両氏の大企業有利の政策に拠り、非・正社員（パートタイマー/非正規雇用）や派遣社員が一気に増大した為に雇用側有利の賃金体系が確立してワーキングプワ（働く貧困層）が労働者のかなりのウエートを占め、結果正社員（正規雇用）も常にリストラに遭う危険にさらされて圧迫され、給料も長い事上昇せずに正規雇用者までもが勤め先企業に対する忠誠心を失いつつ、物価だけが上がり続ける今日を迎えた。


物事には何でも比例する事と反比例する事が同時に存在する。

欲に駆られた経営者ほど「目先の利」にばかり目が行って、雇用を含む企業の在り方を考えないまま「食品偽装」を続けた。

つまり、ここ何年かで頻発する「食品偽装の内部告発」は、個人と企業が一蓮托生の意識で企業への忠誠心が存在した過去の「擬似の群れ」が崩壊したからである。

勿論こうした雇用環境の変化に拠る内部告発は、食品業界には留まらない企業リスクである。

それでもこの「非正規雇用制度」を活用しようと考えている企業は、労働関係法は勿論、種々の関係する法令法規をまず順法する危機管理をキチンとすべきである。

しかし、人間の本質である「群れる動物（群れ社会の生き物）」を無視した企業経営が「末長く持つ」とは、我輩は思えないのである。


実はこの「群れ社会意識」は、強力な「社会安全の要素」でもある側面を持っていた。
,br> 考えて欲しいが、群れの最小単位は家庭であり近頃蔓延する「私権意識」よりも「家庭と言う群れを優先する意識」が強ければ、何か事件を起こして「家族や親戚に迷惑を掛けられない」と、自重する抑止効果を得られる。

所が、現代の余りのも強い「私権意識」は、家族や親戚への迷惑は思い到らないで、只々短絡的に個人の感情で行動する愚を犯す事になる。

この「私権意識」の蔓延は、小泉・竹中内閣の強引な「米国型競争経済政策」と無縁ではない。
米国型競争経済は、儲けるには何でも有りの殺伐とした「私権意識社会」を生み出した。

果たして、現代の余りのも強い「欧米型の私権意識」を安易な時代意識で「今はそう言う時代だ」と、判ったように「かたずけ」て良いものだろうか？

行き過ぎた「私権意識」が、衝撃的な事件を生む背景にある事を、人々はもっと考えるべきである。

ここでキツく言って置きたいが、政治は経済だけではない。

我が国では、古来政治をする事は「まつりごと（祭事）」と言い、治世を司る事は神の代行をする神事だった。

社会と言うもの全般の治世を司る事が政治であり、社会的影響も無視する米国かぶれに狂った経済学者が政治などに首をつっこむものではないのである。