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【誓約(うけい)】

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誓約(うけい)

誓約(うけい)夜這い村落共同体
寝宿集団婚妻問婚(通い婚)

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆誓約(うけい)◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

古来この国では、口先だけの仲は「真の仲間」とは言えない。

この国には、伝統的に「誓約(うけい)」の概念が介在して来た歴史がある。

人間の認識など変えうるものだから本人が「これが正解」と思い込んで居るだけで、本来常識とか普通と言うものは存在しない。

そこを念頭に物事の発想を始めないと、思考の柔軟性を自(みずか)ら縛る事になる。

大抵の解説で、誓約(うけい)を安易に「占いの結論や神に対する祈りの誓(ちか)いの事だ」としているが、実は本質を知っていてその結論を表記する事を避けている向きが多い。

神話や伝説の類を良く読んで見ると、誓約(うけい)はロイヤリティ(忠誠心)を示す為のもので、誓約(うけい)の結果として新たなる神や子供が誕生する事が多い。

つまり、性交を伴う現実的な忠誠の証が誓約(うけい)なのである。

大和朝廷成立前後の古(いにしえ)の日本列島は、民族(部族)の坩堝(るつぼ)だった。

古い時代に住み着いた在来部族と、後期に渡来した進入(流入)部族の生きる為の争い。

その手打ち式が天の岩戸の宴席、岩戸神楽だった。

日向の地で決戦に破れ、高千穂の天岩戸で手打ちを行い、誓約(うけい)を持って、心身ともに和合する事で「両者統一に向かった」とするなら、ドラマチックではないか。

異民族の王同士の結婚、これは民族の和解を意味し、双方が滅びないで済む究極の和解であり民族同化の象徴である。

この誓約(うけい)の概念が、実はその後の二千年の永きに渡り日本の民(民族)の形成に大きな影響を与えて行くのである。


基本的に、人類は「群れ社会」の動物である。

人間の行動の全ては、生き行く事の恐怖心から始まっている。

食料の確保、外敵、傷病、全てが生き行く為の恐怖に繋がっているから群れて「共生」して来たのである。

人類は群れて生きる共生動物だからセッション(交流)が大事で、そのセッション(交流)の最たる形態的象徴が性交を手段とする誓約(うけい)である。

誓約(うけい)のそもそも論は「対立の解消」にあり、その究極の証明形態が契(ちぎり/性交)に拠るコンプライアンス(要求や命令への服従)の実践で、後に恋愛感情に発展する事は有っても初期の段階では恋愛感情とは全く別のものである。

誓約(うけい)のコンプライアンス(要求や命令への服従)であるそれは、群れ同士の対立を解消し和合して行くマッチング(相性/適合)の証明手段であり、群れの長(おさ/リーダー)に対してのロイヤリティ(忠誠心)や群れの仲間に対してのペイ・リスク(支払うべき危険負担の代償)だったりマーキング(烙印や標識を付ける行為)だったりする。

今日のスワッピング(夫婦交換)プレィと日本各地に存在した村落公認の「夜這い制度」におけるセックス・セッション(乱交)は筋が違う。

あくまでもこれは、集(つど)いて行為の時間を共有するセッション(共演/協議)である。

セッションには(協議や会議)の意味もあり、言わば「語らい」である所から、性行為を通じて親近感を醸成し「意志を通じ合う」と言う意味もある。

つまり「夜這い制度」や「寝宿制度」に拠るセックス・セッション(乱交)は、群れとして解り合える為の究極の手段なのである。


この国には、二千年の永きに渡り特殊な性文化が存在した。

元を正すと、縄文末期に日本列島に数多くの征服部族が渡来して縄文人(原住民・/エミシ族)を征服し、それぞれが土地を占有して小国家を打ち立てた。

その征服部族の出身が、中国大陸から朝鮮半島に到る極めて広域だった事から、被征服者の縄文人(原住民・/エミシ族)を含めそれぞれが対立したこの環境を、武力を背景にした強姦や性奴隷化ではなく、双方の「合意に拠り創り出す知恵」が、誓約(うけい)だったのである。


太古の昔、人間は小さな群れ単位で生活し、群れ社会を構成した。

その群れ社会同士が、争わずに共存するには性交に拠る一体化が理屈抜きに有効であり、合流の都度に乱交が行われて群れは大きくなって村落国家が形成されたその事情が、仲間として和合する為の誓約(うけい)の性交を産みだしたのである。

弥生期初期の頃は、大きく分けても本来の先住民・蝦夷族(えみしぞく/縄文人)加羅族(からぞく/農耕山岳民族)系渡来人呉族(ごぞく/海洋民族)系渡来人の三つ巴、その三っも夫々(それぞれ)に部族集団を多数形成していた。

つまり最大の政治(まつりごと)は、それらの勢力の争いを回避する手段の発想から始まり、その和解の為の最も実効があるツール(道具)が誓約(うけい)の性交に拠る血の融合だった。

そしてその誓約(うけい)の性交は、新しい併合部族の誕生を呪詛(祈る)する神事と位置付けられて、主要な「祀(祭・奉)り」となった。

語呂合わせみたいな話だが、祀(祭・奉)り事は政治(まつりごと)であり、政治(まつりごと)は性事(せいじ)と言う認識が在った。

直前まで争っていた相手と急激に互いの信頼関係を構築する証としての方法は、性交に拠り肉体的に許し合う事をおいて他に無い。

つまり日本民族は、日本列島に流入してきた異民族同士が現地の先住民も巻き込んで合流し国家を作った。

平和共存の手段賭して編み出されたのが、天宇受売命(アメノウズメノミコト)猿田毘古神(サルタヒコカミ)に代表される神話の世界の誓約(うけい)の性交である。

その基本的概念が、天照御大神(アマテラスオオミカミ)と須佐之男(スサノオ/素佐王命)の誓約(うけい)に象徴される神話になっている。

この場合の誓約(うけい)の実質的な合意の儀式は何であろうか?

異民族同士が、簡単且つ有効に信頼関係を構築して一体化する手段は一つしかない。

それは、性交に拠り肉体的に許し合う事に拠って究極の信頼感を醸成し定着させる事である。

その結果は明らかで、次代には混血した子孫が誕生する。

「誓約(うけい)」とは、一義的には性交を伴う現実的和解であり、結果的に両部族(両民族)の子孫が融合して新たな部族(民族)を創造する事である。

つまり、食料確保の為に縄張り争いによる殺し合いが当然の時代に、究極の握手に相当するのが誓約(うけい)の概念である乱交とその後の結果としての混血による群れの一体化である。

この「群れそのものを家族」とする唯一の手段としての知恵に、異論は無い筈である。

現在の国家意識、民族意識、つまり所属意識の原点は、「同じ血を共有する」と言うこの誓約(うけい)の概念である。

ものの考え方に個人的心情を持ち出すと、結果、周囲に対して虚像の演出を強制する無作為の罪を犯す事になる。

しかしながら、事実を無視してでも物事の全てを心情で解決しようとする者は後を絶たない。

所謂(いわゆる)秘匿意識が強く多くの方が正面を向いて語ろうとしないが、性交衝動は極自然な事だから、正直、生き物である人間に性交衝動が無い方が異常である。

但し群れ社会の生き物である人間には「社会性」と言う別の縛りが在るから、その縛りを無視した性交衝動は抑制されるのも当然である。

とは言え、その「社会性」と言う別の縛りは時代時代の価値観に於いて弾力的に解釈されて来たものであり、当然ながら絶対不変のものでは無かった。

つまり古代日本から明治維新まで連綿と続いていた「誓約(うけい)」の概念は、ズバリ次元が違う「社会性」なのである。


明治維新で日本の性文化が劇的に変わるまでは、恋愛感情とは別に誓約(うけい)の概念に拠るセッション(交流)の最たる形態的象徴「性交」が群れの「共生手段」として社会的に容認されて来た。

そこで、「欧米のキリスト教文化」とは違う「日本独自の性文化」が存在したのである。

その歴史的事実を、日本は先の大戦(第二次世界大戦)以後の急速な欧米化に拠って抹殺してしまった。

つまり歴史的経緯の中で醸成された「独自文化」であったにも関わらす、ほんのここ百〜二百年かそこらで存在しないがごとく封印されてしまった。

隠すだけでは「問題は解決しない」と言う現実は多いのだが、建前を使う事に慣れ過ぎたこの日本国においては、都合の悪いものには「見っとも無い。外聞が悪い。」と蓋をして、何一つ解決せずにやり過す風潮が多過ぎるのである。

夜這いは、愛すべき日本人の知恵だった私の愛した日本の性文化】


血統主義」を貫く氏族の価値観と対極に在ったのが、庶民の価値観「村落共同体主義」の「夜這い文化」なのである。

しかしこの「村落共同体主義」は、果たして自然発生的に生まれたものなのだろうか?

村落共同体主義」が、初期修験道の影響を受けた風俗であれば、その目的は他にある。

調べて見ると、この「村落共同体主義」は、列島の隅々にまで色濃く分布している。

それで、「何者かが画策したのではないだろうか」と気が付いた。

考えて見ればこの「夜這い文化文化」、実は対極に在る氏族の「血統主義」を際立たせ、子々孫々に到る氏族権力の維持に効果的な役割を担う事だからである。

陰陽修験を通して、古代大和朝廷の綿密周到な陰謀が「背後に存在した」と成れば・・・


人間には「意識と行動を一致させよう」と言う要求(一貫性行動理論)がある。

つまり、現代の物差しとは違う価値観が昔村落に存在した理由は、当時の女性は村落を基本にした考え方が「正しい」と育てられていた意識の違いである。

従って、現在の意識を基にした「一貫性行動理論」の物差しを現代に当て嵌めて、「そんな事は有り得ない」と過去を判断するのは危険な判断方法である。

村落共同体の存続を賭けた「少子化対策」のこうした様式は、広義に解釈すると国家にも通じる。

村民が減って行けば「村の力が落ちて行く」と同様、国民の居ない国家は成立たない。従って、「夜這い文化」を現在の固定観念で安易に「低俗」と判断する人は「無知」な人と言わざるを得ない。

現在より余程実践的な性教育システムであり、健全な精神の若者を育てる「民の知恵だった」とも解釈できる。「再開しろ」とは言わないが、先人の知恵に「教えられる所は多々ある」と言う事だ。

それを現在では、「十八歳までは子供」と法律で決め付けている。この抑圧は、若者の思春期の精神生成に、害はないのだろうか?無責任な建前主義に陥って、成長期の大事な若者の精神を、無理解に捻じ曲げてはいないだろうか?

少なくとも、昭和の始め頃まで「夜這い文化」はほぼ全国で行われていた。最後まで残ったのが、昭和二十年の敗戦の頃までで、漁村を中心としてまだこの慣行が残されていたらしい。

しかし、高度経済成長期の集団就職、出稼ぎ、などの影響で村落共同体の崩壊と共に「夜這いは全滅した」とされている。


昭和二十年の初めまで、関東から以西の主に沿海部の漁村に分布する独特の風俗習慣に「寝宿(ねやど)」と言う制度があった。

北日本、東日本ではその存在が希薄である「寝宿」は、地方により「泊り宿」や「遊び宿」とも言う。

若い衆には「若い衆宿」、娘衆には「娘衆宿」があるのが普通だが、男女別のものばかりではなく、土地によって同宿のものもあった。

集会場や仕事場としてのみ用いられるものは「寝宿」とは呼ばない。

寝宿」は文字通り寝泊宿で、男子の場合、若い衆へ加入と同時に「寝宿」へ参加するものと、「寝宿」へ加入する事が、逆に若い衆組への加入を意味する「形態」とがある。

娘衆の場合、集会としての娘宿は多いが、寝泊宿の例は比較的少なかった。

たとえ、寝泊宿があったとしても、いずれにせよ、一つの寝宿に兄弟姉妹が同宿する事は避けるものであった。

寝宿の機能は、「婚姻媒介目的」と「漁業目的」の二つに大別され、双方を兼ねる場合もある。

婚姻媒介目的の場合、若い衆は「寝宿」から娘衆の家・娘衆宿・娘の寝宿へ夜這い(よばい)に訪れ、おおらかに相性を確かめた上で将来の伴侶を選んだのであり、そのさい寝宿と呼ばれる宿の主人夫婦や宿の若い衆仲間達が、助言や支援を行った。

つまり、明らかに村落共同体としての合意ルールによる「夜這い」である。

いずれにしても、この制度は「夜這いを容易にする手段でもあった」と言える。

従って結婚すれば寝宿から卒業する地方もあった。

一方、漁業目的の場合は、寝宿から夜間の漁に出るほか、寝宿に宿泊して遭難、災害、紛争(他の村落相手)等の非常時に備える現実的な目的があった。

寝宿」としては、一般に新婚夫婦のいる家屋の一部屋を利用するものが多いが、漁業に関係した「寝宿」は網元の家が用いられる事もあつた。
また寝宿専用の家屋が常設されている地方もあった。

こうした慣習が、関東以西の広範囲に大正末期までは顕著に続けられ、その名残は、地方によっては村の青年団や消防団などがこうした習慣を継承して、昭和の二十年代初めまで続いていたのである。


氏ではない非征服部族の民人蝦夷の扱いは、村里集落が一つの共同体単位で、「**村のゴンベイの所の娘っ子のオサト」と言う表現の集団だった。

非征服部族の民人蝦夷は、氏を持たない事でその身分が土地に固定し、その土地の附帯的な存在に位置する身分だったのである。

実はこの我が国の大衆社会に育ったこの特異な「村落共同体」の共生社会意識「村里集落が一つの共同体単位」が、それ以後我が国の庶民に永く続く「村落共同体」の「共生社会意識」を育てた最初の出来事だった。


公家や神官、武士と違い、彼ら民人は村(居住地)の所属であり、その土地の統治者の所属だった。

村(集落・居住地)の名が、一体化した村人の氏姓(うじかばね)の代わりだった。

つまり氏姓(うじかばね)の代わり、土地の名に支配者の名(苗字)がかざされ、「大田村(太田氏が所有する)のゴンベイ」と言う表記になる。

村長(むらおさ)の別名「名主(なぬし)」の語源は、ここから来ている。

その後町が形成されたが、町人も「**河岸のタロ吉、**辻のジロ吉」で、氏(うじ)姓(かばね)は無い。

他に通用したのは、大店(おおだな)商家の屋号が精々である。

この身分の線引き、かなり時代が下がると一部の例外として士分に取り立てられ、「氏を名乗る者もいた」のだが、あくまでもこの原則は明治維新まで変わる事は無かった。


元々性交は「自然行為(繁殖行為)」であるから、ルールは後から付いて来た。

その点では他の動物と余り変わりは無い。

例として挙げ易いので「おしどり」と言う鳥を揚げてみると、「つがい」の仲が非常に良いので、仲の良い夫婦を「おしどり夫婦」と形容するが、実際は大半の「つがい」は一繁殖シーズンだけの仲で、次のシーズンは別のペア(つがい)になるそうだ。

集団婚」と言う婚姻形態は、一言で言えば「複数の男と女がグループ」で婚姻関係を結ぶもので、日本を含めて採取狩猟時代から歴史的に長く行われていた。或いは、先住の日本列島の民、蝦夷族(エミシ族)に、この習慣があったのかも知れない。

いずれにしても、村落共同体社会の「共生主義」は誓約(うけい)の精神を発揮した「集団婚」の形態を採って居たのである。

「妻問婚・妻間婚」とは、男が女性の下へ通う婚姻形を指している。

中国・雲南省の水耕稲作発祥の地は、未だにこの「妻問婚(通い婚)」が行われて居る土地だが、正月の風習などわが国の習慣に共通点が多いので、昔から初期日本民族(統一大和族)に於ける「習慣の遠いルーツでは無いか」と指摘されている。

正し、言っておくが、記録に残っているのは相応の家柄を有する征服部族の末裔だけで、底辺の庶民の記録には残らない。

この「妻問婚(通い婚)」の呼び名が、「夜這い」の語源で、動詞「呼ばふ」の連用形「呼ばひ、が名詞化した語」と言うのが定説で、「夜這い」と書くのは当て字である。

「呼ばひ」は上代から見られる語で、本来、男性が女性の許に通い、求婚の呼びかけをする「妻問婚(通い婚)」事を意味した。

この求婚の呼びかけ、今ほど厳密なものでなく、「唯の口説き」と区別は付き難い。

当時は男性側に、「多妻・重婚」が多かった。

そしてそれがさして批難されない社会風土だったのだ。

勿論、この「呼ばう」の場合、女性が呼ぶのであるからお相手の選択権は呼ぶ方の女性にあった。

そして、気分次第で呼ぶ相手が違っても別段不思議な事では無かった。

つまり女系主体の子孫継続の形態である。

これはその時代の合意であり、現在の倫理観とは大きく違うが、現在の考え方はその形式の一つに過ぎず、絶対的なものではない。

やがて、後発で入ってきた渡来人や経典の影響で、父系の血筋を繋ぐ貴族社会から、徐々に「嫁入り婚」が支配的になり「妻問婚(通い婚)が、不道徳なもの」と考えられる様になった。

当時は照明が発達していないから昼間働き、「夜、性行為をする」イメージが定着していた為、「夜這い」の文字が当てられた。

時代が下がり、「夜這い」の字が当てられて以降、求婚の呼びかけの意味は忘れられ、「男が女の寝床に忍び込む意味」として用いられる様になった。

その性交習慣の名残が、つい五十〜八十年前まで密かに村里に生きていた。

村人の結び付きの手段で有り、団結の象徴だが、価値観の違う為政者(支配階級)は認めない。

それで、建前は「一夫一妻制」を取ったが、現実には誓約(うけい)に拠る「夜這い」は、本音の部分で村内は公認だった。

夜這い」は男が女の家に侵入して交わって帰る事である。

現実問題として、相手にも家人にも了解がなくては成功(性交?)は難しい。

夜這いだけは、年の上も下もない。

身分、家柄もへったくれも関係ないのが村の掟である。

そして、相手は頻繁に変わっても良い。

つまり、「夜這い」を仕掛ける相手も未婚の娘とは限らない「総当り制」で、婆、後家、嬶、嫁でも夜這いが許される村も多かった。

その場合は、永きに渡り守られて来た風習であるから、夫もそれを平然と受け入れなければならなかった。

妻や妹、そして娘を「夜這い」されても、夫や親兄弟は文句を言わない。

それが、村を挙げての合意された「掟」だからで有る。

「掟」である夜這いによって妊娠し、子供が生まれる事があっても、夫はその子供を「自分の子として育てる」のが当たり前だった。

確かに村落一体と成った乱倫では父性の位置は不確実で、実の父親が誰なのかは問題にされない。

しかしこの事は、血統至上主義を「拠り所」とする氏族とは対極の身分に位置した民人(非支配者下層階級/非良民・賤民)の「血統至上主義」へ対抗心が根底に在ったのかも知れない。

この風俗習慣は、遠い昔の修験山伏・陰陽師勘解由小路党の残した性と子作りの規範が、元になったのは言うまでも無い。

彼らは永い時代を超えてその風俗習慣を守って来た。

それが、長年の村のルールだからであると同時に、自分達にもその事に参加権がある「集団婚的な性規範」であったからだ。

誰の子か判らない子を、自分の子として育てる事を奇異に感じる者は、感性に偏りがあるから深く考える必要がある。

これは人間性の問題で、「連れ子や養子を愛せるか」と言う事に共通している。

言わば考え方の問題だが、もし、私権である独占欲や血統主義が判断基準であれば、そんな自分勝っ手な奴に連れ子や養子は愛せない。

つまり日常生活を共有する連れ子や養子を愛せるならば、妻への愛情が本物であれば誰の種であろうとも妻の産んだ子を愛する事は、養子依りは更に容易な筈である。

その意味では、夜這い村落共同体の村内に在って特殊な事ではなく頻繁・日常的だった。

何故なら、子供の親が特定されるより「誰の子か判らない」方が返って村は平和で良いのだ。

いずれにしても、永く続いた村の村落共同体の中での価値観は、現在の物差しでは計れないのである。

目的は誓約(うけい)に拠る村の団結(全て身内の気分)で有り、人口の維持発展、治安維持である。

本来人間は、「共に生きる事で互いを理解し合うもの」で有る。

簡単に言えば、「村民皆兄弟」であり、これほどの身内意識は、他の方法では育たない。

小規模(少人数)の村では、男女の比率が平均化されない事態や少子化がしばしば発生したので、この手段の「総当り制の夜這い」が問題解決の最高手段だったので有ろう。

一夫一婦制で男女の比率が違うと、当然、あぶれる(相手に恵まれない)事態が起こる。

これを、手をこまねいて居ては村落共同体少子化に陥るから、救済手段が必要だった。

この考え方、今の日本ではまったく支持されないだろうが、人口バランスに起因する「少子化」に悩む当時の小部落の「有効な対策」だったので有る。

しかしながら、素朴に村の宝、国の宝だった子供を、現代日本では個人の自分の子供でさえ欲しがらない人が増えて、民族絶滅の危機さえ感じる。

村の人数が相対的に多く、若者と娘の員数が均衡している所では、若者仲間にのみ「夜這い」の権限が公認され、対象は「同世代の娘や後家に限られる」と定められていた村の事例もまた多い。

だが、いずれにしても表向きは、一夫一婦制だが、実態的には皆が性的満足を得られる「夜這い」システムで補完されていたのだ。

つまり、おおらかに性を楽しんでいた。

こう言う村社会の「夜這い思想」を持ち出すと、直ぐに自分の尺度で「人間性を無視したありえない事」と結論を出したがる向きが多いが、チョット待って欲しい。

例えばであるが、高福祉で知られる性に比較的自由思想(フリーセックス)の国スェーデンでは、子供は国の宝で、若年出産の為に生活力の無い親の私生児など国で引き受けて育てている。

この思想、「村の子供は村の宝」と言う過っての村社会の誓約(うけい)合意と同じである。

子供はイコール未来の国力で、現在の日本のように、「少子化問題と女性の社会進出」と言う矛盾した奇麗事を並べるより遥かに現実的である。

考えて見れば、この村社会ルールは好く出来ている。

契約書の無い世界は、「相手を許す」と言う究極の誓約(うけい)精神社会である。

つまり、許さなければ「他人同志の垣根」は越えられない。

その象徴が性交で、身内の気分に成れる唯一実体の手段である。

確かな信頼関係を互いに築くには、行動実体が伴う代償は必要で、古来から伝わる最善の手段に「誓約(うけい)」があり、「仲間内での性交は拒否は出来ない」と言うルールで互いが共有する秘密行為が、契約書の無い世界の合理的かつ確実な「究極の証明行為」なのである。


誓約(うけい)に拠る「共生主義意識」について、「もう意識が変わってしまったのだから、今更そんな事を蒸し返しても仕方が無い」と言う意見もあるだろうが、実はこの意識変化はバランス良く変わったものではない。

矛盾する事に、日本人の意識の中に「共生主義社会時代」の思考価値が習慣的に随所に残っているからである。

例えばこれは対外国人には通用しない独自の欠点に成るのだが、よく外国人から「日本人はイエス・オァ・ノーをハッキリしない」と批判される。

その要因を考察するに、元々誓約(うけい)に拠る「共生主義」が日本民族の歴史だったから、感情摩擦を生まない為の習慣として「イエス・オァ・ノーをハッキリしない国」に成った。

これがかなり特異な例で、西欧はもとより隣国の中国や韓国にもそのイエス・オァ・ノーをハッキリしない習慣が無い。

従ってその辺りの認識の違いが付き合い辛さを感じさせ、日本人は自分の認識の方が特異な事を理解できず、相手にハッキリ言われて「カチン」と成り、見っとも無く怒って「あいつ等は変人だ」と判断する愚を犯す。

しかしながら日本民族の二千年は、誓約(うけい)に始まる「共生主義社会」の信頼関係で、村落共同体の根幹を成していた。

この「共生主義」は日本独特の文化だから、中々他国人には理解出来ない。

ハッキリしない事をズルイと指摘されればその通りだが、確かに「共生主義」を貫くのであれば、摩擦を避ける為に明確な「ノー」は面と向って言い難い。

つまり誓約(うけい)に拠る「共生主義」は日本の独自文化であるが、一方で国際化を目指すならそこに矛盾が生じるから明確な「ノー」は必要である。

ただ、「ノー」を面と向って言い難い意識を育てた要因が、当時村落全体が生きて行く為に助け合って暮らすには誓約(うけい)の「身内意識」が必要だったからである。

当時の村落共同体に、誓約(うけい)の「共生主義」が成立したのには、村落内での「夜這い」や「寝宿」、「暗闇祭り」と言った性行事に「ノー」は禁句のルールが在った。

これを「もう時代や価値観が変わった」と、現代の倫理観だけで単純に判断をしては成らない。

個人主義に徹した私権社会のこれだけ殺伐とした現状を見るにつけ、果たしてどちらの社会が良かったのか考えさせられるものである。

我が国の「祭り(祀り/奉り)」の意味合いでは、政治を「マツリゴト」と表現し「お祭りをする」は性交の隠語でもある事の解釈である。

これこそ天岩戸伝説を始めとする誓約(うけい)に拠る異民族統合を経験したこの国の成り立ち意味しているからである。

つまり最大の政(祭り)事(政治行動)が誓約(うけい)の性交に拠る異民族和平だったからこそ、祭事(祀り/奉り)=政治(マツリゴト)=性交(せいこう)と言う言葉への解釈に、同じ意味合いを持たせる共通認識が過去に存在したのではないだろうか?


この誓約神話(うけいしんわ)の初出である古事記日本書紀に於けるエロチックな神話から人身御供伝説まで、桓武帝修験道師を使ってまで仕掛け、「性におおらかな庶民意識」を創り上げた背景の理由は簡単な事で、異部族を混血化して単一民族に仕立てる事であり、為政者にとって見れば搾取する相手は多いほど良いのである。


誓約(うけい)を天照大神(あまてらすおおみかみ)とスサノウ命(須佐王)姉弟の「占い」などと綺麗な神事にまとめて解説しても、実は史実との整合性は無い。

何故ならば、大和朝廷が開かれて以来依り平安時代まで、天皇が自分の姉・妹・実娘を后妃(妻)にした事実が良く散見される。

その訳は、伝承故事に拠ると天照大神(あまてらすおおみかみ)とスサノウ命(須佐王)の姉弟の誓約(うけい)の性交がこの国の始まりとされているからである。

そしてこ誓約(うけい)の性交が、争っていた部族和合の呪詛(じゅそ)と成ったのだから朝廷の解釈上は、身内婚で在っても神々の婚姻に違和感が無いのだ。

和合の呪詛(じゅそ)とは、異部族を混血化して単一民族に仕立てる事であり、これは合理的で立派な神事だったのだが、皇統の身内婚は「神話解釈の間違い」である。

それにしても、歴史的に観ればその時代時代で変わる当時の「性の規範」を、現代の規範に無理やり合わせて作文し、「綺麗事だけを子孫に伝えよう」と言う「善意振った無理な人々」が幅を利かせている。


小生の著述する歴史内容について、「危険だ」と言う指摘がある。

理由は、不都合な過去の歴史を暴(あば)いては「日本人に劣等感を抱かせるからだ」と言うまったく違う認識が理由である。

こうした史実が現在の性規範に合わないから、「誓約(うけい)神話」も、村落部の「修験・人身御供」も、氏族の「稚児小姓・衆道」も、「無かった事にしょう」と言うのだ。

つまり不都合な歴史は誤解を生じて「危険」だから事実でも「伝えるのを控えた方が良い」と言いたいらしい。

この強引な指摘をする方は、アンカリングの中にドップリ浸かって「建前」しか認めない非常識な「自称常識人」である。

しかしこの、「綺麗事だけを子孫に伝えよう」と言う無理な「自称常識人」には作為的違和感が強く、けして褒められたものではない。

歴史を綺麗事でまとめて定説化し、その嘘を「常識として教え込む事」こそが危険では無いのか?


何と言っても歴史研究の第一歩は「大胆な発想」で、「定説」に頼っては何の進歩も無い。

ソモソモ無難な所で歴史をまとめ、恥ずかし気も無く「定説」と称して押し通す「自称常識人」にはウンザリする。

統治手段としての教育にしても、事実を隠して民心を掌握する為にこうした嘘っぽい事を教えるから、ついでに統治者の都合が良い話が押し付けられる。

統治者の発表が正しく無いから生まれたのが「民主主義」で、そこを否定したら建前と本音が乖離(かいり)している事になる。

物事を解決に導くには、「問題事に蓋をする」のでは無く丁寧に詳しく説明して理解を得るべきである。


アフリカ・コンゴに生息するサル目(霊長目)ヒト科チンパンジー属に分類される類人猿・ボノボ、遺伝子が人類に九十九%も一致するほど最も人類に近い事が判っている。

類人猿・ボノボは言葉を理解し、生殖以外の目的の性行動を行うなど、チンパンジーよりもずっと人間に近いとも言われている。

その類人猿・ボノボは、雄(オス)どうしが個体間の争いをすると、仲裁に入った雌(メス)との交尾(性交)でその場の興奮を一瞬で鎮め解決する。

勿論、ボノボ社会が「群れ婚」だと言う事で、争い即・「手近(てじか)な雌(メス)」との交尾(性交)が成立している。

類人猿・ボノボが、争いの解決手段に交尾(性交)や疑似交尾(疑似性交)の快感を有効活用するなど、或る意味見事に合理的な方法を採っている。

或いは、日本神話に於ける「誓約(うけい)」の原点は、そうした発想に近いのかも知れない。



【了】

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【小説・現代インターネット奇談 第二弾】

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